真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第三十九斬 『お弁当』

公開日時: 2021年7月4日(日) 14:00
文字数:395

 友人のサチが神社でおはらいを受けたというので、理由を尋ねてみた。



「私さ、会社にお弁当作って来るじゃん」


「うん」


「それが最近さ。お昼に開いてみたお弁当の中身が、朝作ったのより明らかに減ってるんだよね」


「え・・・?」


「これはたぶん霊の仕業しわざだと思って。神主さんに相談してみたわけ」



 霊以外の、もっと切実な何かが原因なのでは・・・と思ったが、敢えてそれ以上は何も言わなかった。

 サチは昔から、ちょっと不思議ちゃんなところがあったし。


 ――結論から言えば、例の〝お祓い〟から後、

 お弁当の中身が減る怪異はナリを潜めているようだ。


 サチも「お祓いが良かったんだ」と納得している。



「でもやっぱりあの時のあれは、大昔に餓死した人とかだったんだろうね-。

 だって、米やもちが食いたいって。毎日毎日、枕元で言ってたからサ!」



 ・・・昼休みに、サチがポロリとこぼした意味不明の発言は

 追求したら何だか怖くなりそうなので、ひろわなかった。



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