真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第三十一斬 『家鳴り』

公開日時: 2021年6月26日(土) 14:00
文字数:268

 骨壺こつつぼの中の親父おやじの骨を便所に流してから、真夜中に窓ガラスがきしんだり金属がこすれ合ったりするような音が家の中で聞こえるようになった。


 オフクロと俺へ日常的に暴力をふるい、姉ちゃんにも口では言えないようなひどい事をやり続けた最低の父親。気が弱いくせに家族にだけは尊大そんだい糞野郎くそやろうだったが、死んでからもこれっぽちのさわりしか起こせないのだとしたら笑える。音が聞こえるたび、「オラ、もっとハデなことやってみろよ」とすごんでいるが、あんじょう、何も出来ないでやがる。



 やっぱ人間

 生きてるうちがはなだねぇ

 親父。



 ――おはらいなんかするもんか。

 このままずっと

 嘲笑あざわらい続けてやる。


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