真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第三十八斬 『水色こびと』

公開日時: 2021年7月3日(土) 14:00
文字数:322

 学生時代。ある日の夜。


 部屋でDVDをていたら、

 不意にクスクスクスッと

 小さな笑い声のようなものが聞こえた。


 声の方へ視線をやると、

 何と全身が水色をしたこびとが本棚の陰からひょっこり半身はんしんのぞかせて

 こちらを凝視ぎょうししている。


 ギョッとした。

 おまえ、何笑ってんだぁ! と反射的に大声が出た。



〝――ゴメンナサイ〟



 こびとは妙なイントネーションでそう発し、

 サッと本棚の陰に完全に隠れた。

 直ぐに確認してみたが、

 何処どこにも何も居なかった。



 翌日、早朝から38℃を超える高熱が出た。


 こびとの仕業しわざだろうか。

 その他の病的症状は無かったものの何故か熱だけは長く治まらず、

 結局二日も学校を休んでしまった。



 〝ゴメンナサイ〟と素直に謝ったわりには

 ひどくえげつないことをするヤツだ、と思った。



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