真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第二十斬 『札首』

公開日時: 2021年6月15日(火) 16:00
文字数:334

 この町には幼少の頃から住んでおりますが、

 近所の池の上には生首が浮かぶのです。


 ええ、武者むしゃでしょう。

 ざんばらの、青白い首なのですがね。

 気味の悪いことに、顔面へ御札おふだを貼り付けているのです。


 書かれている文字についてちょっと調べてみましたが、

 どうも仏様の功徳くどくを表す〝梵字ぼんじ〟というものらしくて。

 いやはや、どんな死に方をすればあんな姿になるんでしょうな。



 え、私の他にも見える人がいる?

 御札でなくサ〇ンパスに見えている?



 ハハハ・・・文字の書いてあるさまがわからないんでしょうかね。

 若い人は面白いことをおっしゃるものだ。



 ああ、そうそう。アレね。

 見続けていると、だんだん大きくなってきますよ。


 だから十年も経てば、その女性にも御札の文字が読めるようになるでしょう。


 目視もくしえれば、の話ですがね。


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