「ミミグスイ、いらんかね。
ウッヒヒヒヒヒ・・・」
ねっとり厭らしい、油ギッシュな中年ハゲ親父を想像させるトーンだった。
中学の頃、下校途中の河川敷近くで
いきなりそんな声から耳元で囁かれたことがある。
ビックリして周囲を見回してみたが、誰もいなかった。
一緒に帰っていた友達から、怪訝な視線を向けられた。
家に帰って、物識りのお祖父ちゃんに尋ねてみると、
「よくそんな古い言葉を知ってるな」と感心され、
「ミミグスイとは耳薬の意味。
〝ミミグスイいらんか〟は、
〝いい事を聞かせてやろうか〟
という古い言い回しだよ」
と教えてもらえた。
あんな声から〝ミミグスイ〟は欲しくないな、と
切に感じた、少女時代の思い出なわけで。
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