勤め先の局に、いつも同じ時間に来て同じ時間に帰っていく人が居る。
きっちり五分間。
何をするでもなくお客様用の椅子に座り、
そしてスッと出て行く。
日課のように。
ある日先輩に「あの人いったい何なんですかねぇ」と尋ねたところ、
「お前、あの人の姿とかちゃんと見えてるの?」
尋ね返された。
「そうか、見えてるのか。
俺には半透明にしか見えない。向こうの景色がスケスケだ。
ぶっちゃけ、薄すぎて顔かたちすらよくわからんのだ」
溜息をつかれた。
ああそうか、〝生きてない人〟なんだ。
納得した。
そして
喉仏のあたりにやけに大きな傷があるなァと訝しく思ってたけど、
それが死因――
何だか胸のつかえが取れたような気がしてスッキリした。
ふつう、あれくらい抉れてたら死ぬもんな。
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