真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第十八斬 『ミサンガ』

公開日時: 2021年6月13日(日) 16:00
文字数:397

 小学五年生の頃。


 同級生の森くんに、手作りのミサンガをプレゼントした。


 森くんは絵に描いたようなサッカー少年で、私の初恋の人。


 でも、それから数日のうちに

 森くんの腕に巻かれたミサンガは二本、三本、四本と数を増していった。

 どうやら密かに彼をおもっていた女子らが、

 しょっぱなの私に負けるまいと躍起やっきになり

 ミサンガを贈りまくっているようだ。


 当の森くんは

 それを男友達に見せびらかし、えつっているらしい。



 ――何か幻滅げんめつした。

 恋が冷めるという感情を生まれて初めて経験した。



 が、それから半月ほどで。

 森くんの両腕から、全てのミサンガが消えた。

 何でも、すべて同じ日にプツリと切れたとの事。

 願い事が何でも叶うぞ!と。本人は有頂天うちょうてんだったが。



 それから幾日いくにちも経たないうちに、

 森くんは練習中

 両足のアキレスけんを切り、長い車椅子生活を余儀よぎなくされた。

 とても不自然な事故だったようだ。



 子供ながらに、

「世の中は上手く出来てるなぁ」と思った。



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