真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第二十四斬 『眼光』

公開日時: 2021年6月19日(土) 16:00
文字数:377

 前の職場でのことだ。

 登山が趣味で、口を開けば山の話ばかりするような同僚が居た。

 

 一度そいつから

 「〇〇山の裾野すその山姥やまんばを見たんだ」

 ――と告白された事がある。

 

 何でも 何処どこにでも居るようなふつうのお婆さんで、

 オレンジ色のトレーナーを着ていたそうだ。

 

 そりゃお前、何処にでもいるふつうのお婆さんだったんじゃねーか・・・と突っ込むと、

 彼はちょっと機嫌きげんを損ねたのか視線をけわしくし、

 

「それがその婆さん、出会うなりいきなり話しかけてきたんだがよぅ、

 その口がよぅ、まったく動いてなかったんだよ!

 その代わり・・・・・・」

 

 その代わり、

 両目の色が、早口な言葉に連動するようにチカチカと変色・発光したそうだ。

 目まぐるしく、チカチカと。

 プリズムライトのように。

 

 

 お婆さんが何を話しかけてきたのか。

 それに対して彼はどんな反応をとったのか。

 どれだけたずねても 何故かそれ以上は何も教えてくれなかった。

 

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