真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第四十八斬 『朝顔の木』

公開日時: 2021年7月13日(火) 14:00
文字数:390

「通学路に、朝顔の木があるよ」

 小学生の息子が言った。



「朝顔は木には咲かないよ」

「咲いてるよ」

「へぇ。何処に。連れてってくれよ」

「うん、いいよ」



 勘違いをからかう腹づもりであったのだが、

 実際案内されて 逆に唖然となった。


 伸びに伸びた朝顔のツルが細い木の幹を伝って上方へ伸び、

 繁った葉っぱの中で 幾つもの青い花を咲かせていたのだ。



「ホー、これは珍しいもんだな」

「そうなの?お父さん」

「ああ。撮っとこう」



 と、スマホを向けた瞬間

 咲いていた無数の朝顔が

 一斉にボトボトと地上に落ちた。



「ぎゃあああああ!!」



 私もビックリしたが、息子の驚き方は異常とも言えるものだった。


 ほとんど引き付けのような状態となったので

 仕方なく背中にぶって帰った。



 息子は、今でもこの時の話をすると本気で身震いし 「やめて!」と泣く。


 いくら何でも怖がり方が過剰だ。


 ・・・・・・私が知らない何か

 あのとき 見てしまったとしか 思えない。


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