真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第三十斬 『骨壺』

公開日時: 2021年6月25日(金) 16:00
文字数:316

 長年苦しんでいた逆流性食道炎ぎゃくりゅうせいしょくどうえんが、嘘みたいに完治かんちした。


 別段何か特別なことをした覚えも無かったが、とにかくホッとしたので

 同居している母親にこういうこともあるんだなぁと雑談ついでに話したところ、

「そう言えばねぇ」とこんな話を聞かされた。


「先日、本家の旦那さんがお墓をヨソに移そうとなすったんだけど、

 見覚えのない立派な造りの骨壺こつつぼが出てきて、

 直ぐそれを処分されたそうだよ。

 そのせいかも知れないねぇ」


 ふぅん、そうなんだ とだけ答えた。



 ――何故、本家の墓事情はかじじょうと自分の体調が関係するのか。

 そんな立派な骨壺を何故こともなげに処分したのか。

 どう処分したのか。



 頭の中がたくさんの疑問符ぎもんふで満ちたが、

 知らない方が幸せのような気がしたので、

 もう忘れることにした。


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