ある日を境に
自傷行為を繰り返すようになった妹が
改まったような表情で、私の部屋に入ってきた。
ひと月ほど、ほとんど部屋に閉じこもり切りだったので
どういう風の吹き回しかと息を飲んだ。
「お兄ちゃん。私のコレ、もう終わるよ。
今夜、その知らせがあるから。
それを確認したら、もう大丈夫」
――お前、それどういう意味だ?
尋ねてみても答えず、直ぐに部屋を出て行った。
何となく 厭な予感がした。
その日の夜、
夕飯の洗い物をしていた母が、「何これ!」と声を上げた。
駆け付けてみると、困惑した様子で流しの方を指さしている。
水道から、濁った赤茶色の液体がジャバジャバと流れていた。
血液のような、不快な鉄分の臭気が鼻を突く。
赤錆。
(あっ、これが知らせってヤツか?)
妹に教えてやろうと思い、部屋に向かった。
水道から錆水が出たぞーっ、と叫びながらドアを開けた。
妹は、部屋に居なかった。
家の中の、何処にも居なかった。
今も帰って来ない。
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