真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第三十四斬 『町内放送』

公開日時: 2021年6月29日(火) 14:00
文字数:334

 仕事休みの日。

 のんびり昼寝をむさぼっていると、いきなりの町内放送で目を覚まされた。


 だがそれが何だかモゴモゴおかしな言葉を繰り返しているだけで、

 まったく内容が伝わってこない。


 いい加減にしろよな、と思って再び目をつむるや否や、

 妻と娘が「お父さん、これ何?この放送!!」と

 あわを食った様子で部屋に飛び込んでくる。


「〝うつらうつらにしにます、うつらうつらにしにます・・・〟ってわけのわからない言葉を、もう一分以上繰り返してるじゃない!気持ち悪い!!」


 え、と思って ちゃんと耳を澄ましてみた。

 確かに女性の声で

〝うつらうつらにしにます〟と聞こえた。

 何じゃこりゃ?

 口にした瞬間、放送は止んだ。



 直ぐ役場に問い合わせてみたが、

「今日は臨時りんじの町内放送などしておりません」

 とキッパリ言われてしまった。


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