亡き祖父は 終戦直後
焼け野原と化した東京で、
愚連隊をやっていたらしい。
無人となった半焼の屋敷を根城とし
自分たちを〝〇〇一家〟と名乗って
現在でいう半グレ紛いの行為を
繰り返していたという。
そんな祖父が 故郷の熊本に帰って来る発端となった話だというが。
――当時、構成員の一人に 柄にもなく風流を解する不思議な偉丈夫が居たらしく。
いつも根城となる屋敷の茶室にお花を生けて、
「ここは本当に色んな花が映える」
と口癖のように言っていたのだとか。
ある日 その彼が
首領格の男に「もう一家を畳みましょう」と進言した。
「花が 美しくなくなったんです。
いくら生けても どんだけ生けてもーー」
などと、
意味不明の理由を言い出して。
ご想像の通り
男は頭の怒りを買い
袋叩きの末に 破門された。
でも。
それから間もなく 一家も崩壊の道を辿る事になる。
頭が寵愛していた女が
他の一家に寝返ったそうで。
女は 花に由来する名前であったが
裏切った後 改名したという。
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