リスティアを冒険者ギルドに運び込む。
建物に飛び込むようにして入る私達の姿、特に最初にディガー達の姿を見た冒険者達がぎょっとした表情をしていたような気がするが、私はそれどころではないとばかりにカウンターに急ぐ。
すぐに空いてそうなカウンターに居たのは、鋭い眼光の、やせぎすの男性職員。
「すいません! 緊急なんです! そこの路地に倒れていました!」
私は叫ぶようにそのやせぎすの職員に伝える。
その鋭い眼光で、私達と昏睡状態のリスティアを一瞥すると、そのやせぎすの職員は一声叫ぶ。
「フロンターク!」
「ハイハイ、ガッソさん。ただいま行きますよ~」
なんだか飄々とした声が聞こえたかと思うと、小太りの小男がひょこひょことした足取りでカウンターの奥から出てくる。
と、小男の目が、担架に釘付けになる。
「手当ての手配!」
「……はいはいー」
ガッソの指示に、フロンタークはすぐに手伝いの職員を集めると、リスティアを担架ごとギルドの奥へと運んでいった。
それを見届け、面倒になる前に帰ろうと、そっと出口に向かう私。
その肩がガシッと掴まれる。
振り返ると、そこにはガッソと呼ばれた男の鋭い眼光がこちらを睨み付けていた。
──さ、さすがにこのままフェードアウトは無理かー。
「話を聞かせてもらう。こっちへ来い」
ガッソの声にしたがって仕方なく、別の小部屋へと足を運ぶ私。
ディガーたちもぞろぞろ引き連れていく。
その時になって、ようやく私は周りの冒険者達が私とディガー達を凝視しているのに気がつく。
それは嫌悪とも憧憬ともつかない不思議な視線を多く感じた。
「そこに座ったら、ギルドカードを出せ」
小部屋に入るなり、ガッソから命令される。
指定された椅子に座り、冒険者カードを出して手渡す。
ガッソは何かの器具にカードを通すと返してくる。
「それで、どこであの子供を見つけた?」
さっそく質問してくるガッソ。
何故かあまり情報を渡すのは危険だと、私の本能が囁く。
私はできるだけ当たり障りのないように気を付けながら答える。
「彼女はこのギルドを出て少し行った路地に居ました」
「路地か。その場所はゴミばかりのはず。しかも兵の巡回範囲内だ。そんなところで倒れていたらすでに発見されていただろう。どうやって見つけた?」
「……音が聞こえたんです。呻き声のような、声でした。それで気になって、少しゴミを片付けて見ると、人の姿があって」
私はとっさに簡易鑑定の件は隠して話す。
「音、ね」
それだけ呟くと身を乗り出してくるガッソ。
なかなかの圧迫感。
「それであの子供だが、何か知っていることは?」
「……何も。私は見つけただけですので。何かあるのですか?」
「ふんっ。そうか。ああ、あの子供はゴブリンとエルフのハーフだ。」
「……それで? それが何かあるんですか?」
「いや、知らないのならいい」
その後もいくつか尋問紛いの質問を受けるが、何とかやり過ごす。
リスティアはギルドで預かってくれるとのことなので、すべて任せて宿に戻る。
想像以上に疲れを感じた私は、軽くご飯を済ませると、今日はSNSだけ確認したら寝るかと、スマホを開いた。
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