リスティアが居たらしい部屋から下っていくと、壁が急にごつごつとしたものに変わる。
それに伴い、床に水気が増していく。
「足元滑るから、気をつけて……」と、私がディガー達に声をかけてすぐに、つるんと転んだのは、ディアナだった。
やれやれとした表情で彼女に手を差し出すディガー。
引っ張り起こそうと力を込める。しかし、踏ん張るディガーの足元もまたツルツルだったようで、仲良くまた二人でつるんと転んでいた。
そんなこんなで、無事に下りきる。
下った先にあったのは、倉庫かゴミ捨て場か迷うような大きめのスペースだった。雑然としていて、角材ぽっいものや、明らかにゴミだろって言うものが漫然と置かれている。
「なんだ、黒幕とか、強いモンスターでもいるかと思ったよ……」思わず漏れる呟き。
そのまま、スタンピードに関係ありそうなものを探しはじめる事にする。
私は簡易鑑定アプリを起動したスマホを片手に、ゆっくりと雑多な諸々を鑑定していく。
どうやら、ウッドゴーレムの素材か、壊れたウッドゴーレムの部品が大部分のようだ。
「このウッドゴーレムって、エントを使って作られているんだ……。どうも、ゴミから見ていくと、リスティアの血を使って、エントを培養、そのエントでウッドゴーレムを作っていたっぽい。でも、なんでこんなにたくさんのウッドゴーレムを……」
その時だった。右足が何かねちゃっとしたものを踏み抜く。集中して歩きスマホをしていた私は、足元が疎かになっていた。
「うぎゃっ、な、なにこれっ」
小柄な紫色のエントらしき死骸からたれた液体。それが、なかば凝固している。
私は必死に靴裏を地面に擦り付けながら、スマホを向け、紫色のエントの死骸を見てみる。
「あ、これが原因か……」
簡易鑑定アプリにはこう表示された。
『エントプリンス
突然変異で生まれた、ゆくゆくはエントの王となる資質を持った存在。
王になれず、死ぬと、その間際に数十キロの範囲のエントを呼び寄せる人の耳には聞こえない周波数の叫びを発する』
「……どうしよう、これ。取り敢えず急いで外まで運ぶか」
運よく、リスティアを冒険者ギルドに運んだときの担架の装備がそのままになっていた。エントプリンスの死骸を担架に載せ、ディガーとショウに持ち上げてもらう。
私はディガー達を引き連れ、急いで地上へと戻った。
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