私は思わずスマホを取り出し投稿アプリを起動する。目の前の蠢く大樹にカメラを向ける。
その時、スマホ画面にお知らせが来ていることに気がつく。
「あ、投稿アプリ、レベル上がっている」
そこには、投稿lv2(写真 動画5秒)の文字が。
「これってもしかして動画が投稿できるようになったのか!?」
私は早速動画ボタンを押してスマホで撮影してみる。
5秒なんてあっという間だが、目の前で根がうにょうにょと|蠕動《ぜんどう》し、木がスライドするように動く様子がバッチリ写る。
早速投稿してみる。
私が撮影し終わり、投稿作業に夢中になっている間に、血吸コウモリ1匹を残し、ディガーとゴブリン達、他の血吸コウモリ達がその木に襲い掛かっていた。
それはまさに一方的な蹂躙。
ディガーが土魔法で蠕動する根を束縛し、左右からディアナとシュンがそれぞれナイフとスコップで幹を切りつける。
木も必死に枝を振り回し反撃しようとするが、軽やかに避けるディアナ達。その隙に血吸コウモリ達も幹に群がり、次々に牙を突き立てて行く。
私が気がついて顔をあげたときにはちょうど目の前の木が倒されるところだった。
「あれ、倒したの! 皆強いなー。あっ!」
私はそこで重大なことに気がつく。
「倒すところを動画に取れば良かった……」
少し気落ちする私の背中をディガーがぽんぽんと優しく叩く。
「おお、ディガー、ありがとう。そして強いね、みんな。ご苦労様」
私も慰められてばかりというわけにもいかないと、気を取り直すとお礼を言ってディガーの頭を撫でてあげる。
その間に、シュンとディアナはその大きな木の死骸にスコップを突き立て、何かしている。
しばらくして、ディアナが何か見つけた様子で私の方に来る。
私はディアナにも労いの言葉をかける。
ディアナは紫色の親指の先ぐらいの小石を渡してくる。
「これは、さっきの木から取れたのかな。くれるの? ありがとう?」
私はなんだろうと思いつつ、せっかくなのでそれを肩掛けカバンにしまう。
その間にディガーとシュンが木を解体している。
といってもノコギリのような物がないので、せいぜい枝を切り落とす感じだが。
切り落とした枝をまとめると、鞄にいれてほしそうに持ってくるディガー達。
「なんだろ、これは持って帰った方がいいの?」
私が彼らに尋ねるとこくこくとシンクロして頷くディガーとシュン。
私は言われるがままに、それも肩掛けカバンにしまう。
収納増加が小でしかない肩掛けカバンはすっかり満杯になってしまったので、街に戻ることにする。
ディガーと血吸コウモリ達をスマホに収納しようとすると、走るジェスチャーをするディガー。
「一緒に走るの?」
私が尋ねるとサムズアップしてくるので、折角だからそのまま街に向けて皆で走り出す。
日がだいぶ傾いた頃。街が見えてきた。
一人で走るより何となく短い時間で街にたどり着いたような感覚。
ディガー達を収納し、街に入る。冒険者ギルドに行くのもめんどくさくなって来たので、屋台で夕食用に適当に見繕い、そのまま宿でその日はご飯を済ませると眠りに着いた。
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