久々の熟睡ができ心地よい朝を迎える。
「寝てしまった」
自然と目が覚めた朝は頭がスッキリしている。
(さて、どうしたものか)
さっそくだが例の件ネイトレスを納得してもらうように頭を働かせる。
要は綺麗なネイトレスを見た者が、邪まな心を持つ者のだとややこしくなるというわけだ。王に迷惑がかかってしまう事を懸念しているわけだし。
だったらその邪まな心を取り払ってしまえばいい。
ガイドブックを久々に取り出し、なにかお手軽で、すぐできそうな事がないかペラペラと探してみる。後ろの方に載っている、洗脳や精神干渉系スキル・アビリティから目ぼしい物を発見。
「見た者の心を落ち着かせ、清らかな気持ちにさせる。か、これは攻撃的な感じの威圧とは違うけど、これでいいかな」
アビリティなのでアイテムにある能力。早速ナナスキルのアイテム制作を使い、シンプルなデザインでネイトレスに似合うような耳飾り型のアイテムを作ってみた。
「うん! なかなか、いいんじゃないか。アイテム作りも面白いかも」
”エンジェルイヤリング レジェンド”
使用者制限:ネイトレス
カウンターアビリティ:エンジェルラダー
追加効果 全ステータス20%アップ 麻痺耐性、毒耐性、怒り耐性20%アップ
ナナスキルを使うのは仲間だけにしようと決めていたが、今回はお詫びも兼ねているといことで自分を納得させた。
綺麗になって、可愛くなったのにお詫びするのも変な話だけど、ネイトレスにとっては古傷でさえも勲章のようなものだったのかもしれない。
「けーーーーーなねえーーーーーさまーーーーー!!」
遠くから響くテッテの声。
ちょうどいいタイミグで2人が来てくれたようだ。
勢いよく扉があき、先にテッテが飛んできた。
「おはようございますですわ!」
「おはよう」
「悪いなケーナ、朝早くから。そいつがじっとしてなくてな」
後から入ってきたネイトレスだったが、恰好はインナーのみ。
「服を着てよ。まさかここまでそれで歩いてきたの」
どうぞ襲ってくださいと言わんばかりのボディーライン見せつけている。
「と言われてもだな、残念ながら服や寝間着など持っていない。普段は甲冑でいることがほとんどだからな」
「男の視線気にならないの?」
「ああ、今日は皆元気に挨拶していたぞ」
誰のせいで元気になっているのか考えてほしい。
敏感なのか鈍感なのか分からないな。
「で、何か妙案は思いついたか?」
「案ってほどのことじゃないんだけど。はい、これあげる」
差し出された耳飾りをまじまじと見て
「か、かわいい……これが妙案なのか?」
「これを付けると悪い男が寄ってこないようになる、オマジナイがかかってるのよ」
「ま、まぁ、折角だからこのマジナイ物は貰っておくぞ。実はな、私も一晩冷静になって考えたのだ。傷が消えたけど私自身が変わったわけではない。昨日は気が動転し昂ったせいもあり強くケーナに当たってしまったなと。騎士としてのあるべき姿ではなかった」
「じゃあ許してくれるの」
「無論だ。むしろ悪かったとも思っている。昨晩あの子にも言われたよ。特異なスキルを持つ者の苦悩を考えたことがあるのかと」
「テッテに?」
「そうだ、あの子も特異なスキルを持っているのだろう?」
「まぁ、あるにはあるね」
「そのような者が苦悩を抱えているなど、思いもよらなかった」
「ネイトレスもたくさんスキル持っているんじゃない?」
「私は逆だ。何も持っていない。だから、求めたのだよ。今所持しているスキルは全て取得したものだ。生まれつきのスキルは1つも持っていなかったんだ」
「それはもう凄い才能だよ」
「いいや、何か特別なものを持っている者が羨ましく妬ましかっただけだ。それが私の苦悩であり欲なのだよ」
「だったら、この耳飾りはネイトレスだけの特別な物なんだから大切にしてよね」
「ああ! もちろんだ、一生大切にする」
一晩でここまで心境の変化があるとは思っていなかったので、思わずテッテの魅了を使って操っているのかと疑ってしまった。
「何かしたの?」
「いいえ、使っていませんわ。ちょっときつめに説教はしましたけど」
テッテの説教がいい仕事をしてくれたみたいだった。
ネイトレスが今の姿で勘弁してくれたようで安心した。納得せずに迫られたらときの次の手を考えてなかったから、その時は記憶でもいじるしかないと思っていた。
「ちょっとすまぬが、これはどうやって付ければよいのだろうか?」
「え、イヤリング付けたことないの?」
「何分お洒落には疎いものでな」
「うん、知ってる。右耳付けてあげるから、左は自分で付けてみて。力任せに付けちゃダメだからね」
「わ、わかっておる」
「うん、うん、似合ってるね似合ってるね」
「ちょっと気恥ずかしいな。いったん外そう」
「ダメ! 折角付けたんだから外しちゃダメ!!」
「わたしですらケーナ姉様から、これといったものは頂いていないのですから、外すのであればわたしが頂きますわ」
「付けとくよ」
そう言ったネイトレスが、鏡の前でちょっとニヤついていたのを見逃してはいない。
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