転生しても困らない!異世界にガイドブック持ち込みでとことん楽しむ

異世界 わりといい世界
しのだ
しのだ

帰宅少女

公開日時: 2022年2月4日(金) 18:18
文字数:2,550

 繋いだ空間収納から自室までは一歩しかないのだが、一歩で次元を超える事ができるのも異世界ならではなのかもしれない……

 

 なんてしみじみ思う間もなく、近づく足音に戦慄を感じずにはいられなかった。


 ガッ 

 バントトトトトトタ-ン

 タッタッタッタッタッタッタッタントッ トッ トッ トッ トットーーン

 ズザーー  

 

 …コンコン


「おはようございます! ラルンテです!! エーナお嬢様、いらっしゃいますか?」


 なぜ、いることがわかったんだ。スキルも魔法も使用できないラルンテだが、ときどき勘の鋭い時がある。

 返事をすると勢いよく扉が開き、姿を見ると同時に飛びついてきた。


「お嬢様ーーーー!!! いったいどちらに行かれてたんですか。もう三日も、う゛っ、う゛ーーーーー」


(三日??)


 三日という言葉が不思議だったが、家出から三日が経過したということか。

 原因はおそらく次元の移動か、収納空間内との時差によるものなのか……。

 

 ハッキリとは分からないが、その分心配をかけてしまい申し訳なく思った。

 

 ラルンテにごめんなさいと伝えると、仕事モードに切り替わり、


「どこにも行かないでくださいね!」

 

と睨みを効かされ、奥様!奥様ー!!! と声高らかに部屋を出てて行ってしまった。


(言い訳どうしよう…)


 ドタドタと数人が階段上がる音がして、部屋に押しかけてくる。

 そこにはユーナ姉様とリーナ姉様までいる。

 いつの間にか大事になっていたのだと改めて思うと申し訳なさに拍車がかかった。


「あぁーエーナ!! どこいってたのぉ!」


 まず母親が抱きつく。


「「エーナ!!」」


 そして姉様ズが抱きつく。


(く、くるしい)


 だがこの程度は我慢しないと、大切な家族に余計な心配をかけてしまったのだから。3人分を支えながら、謝罪をする。


「お母様、突然出て行ってしまい申し訳ありません。あのー」


「もういいわ、帰ってきてくれただけで、エーナがいなくなってしまったら…」


 瑛太の頃は母親の存在をあまり知らずに育っため、エーナ記憶を頼りに母親の事を理解しようとしていたが、まだまだ足りていないと痛感した。

 

 何より、涙ぐむ母親には堪えるものがあった。姉達にも同様に心配して嫁ぎ先からこちらに来てしまったのだろう。


 家族を心配させたいわけじゃないし、モンスターを倒せる力を証明しても心配が全て解消されるとは限らない。


(冒険者を諦めるしかないのか…)


 帰ってきた父親にはお叱りを受け、兄はギルドで後処理をしてるので合わなかったが、心配していたことを伝えられた。


 この身を勝手に使いすぎたなとその夜は反省会となった。





(とって置いたプラチナスライム無駄になるかぁ)


 なんて思いながらガイドブックを眺める。

 どこで間違ったのか。

 そもそも貴族は身の丈に合わなかったのだろうか。 

 おすすめ通りに選んでも、思い通りにはいかないのは異世界も同じなのかも知れない。

 順調に進んでいたら仲間を集め、ダンジョンを冒険している頃なのかも知れない。

 

 もどかしさが押し寄せる。


(んーーーーステータス)


 ----------------

 エーナ・カスケード 女 12歳 反省少女


 LV905 HP55978 MP126580

 STR 2582 VIT 8658 MND 27936

 SPD 902 DEX 1480 INT 36511

 LUK 132


 スキル

 異世界言語A 空間収納A 鑑定眼A 隠蔽A 探索A

 アブソーブS 探究B 剣術の心得F 盗みのいろはF 感知F


 毒耐性F 麻痺耐性F 疲労耐性C 病耐性D 


 属性魔法適性

 火、水、風、雷、聖、闇、空間、時間


 加護

 精霊の加護


 アイテムボックス

【プラチナスライム1】

【ホーンラビット30】

 メイド服1

 簡易地図1

 食パン1

 干し肉1

 寝袋1

 異世界ガイドブック 1

 ルルの餞別(困ったときに使ってね♡)1

 ----------------


 強行突破の冒険のおかげでレベルアップと耐性スキルの獲得があったみたいだ。

 

 そしてモンスターの項目に埋もれて忘れかけていたルルの餞別。


(困ったとき、今です!!)


 空間収納から出すとそれは可愛いリボンついたプレゼントの箱とメッセージカード


『うふふ、本当に困ってるのぉ?よく考えたかしらぁ~』


 なんだかメッセージカードにまで心を読まれてるようで、ちょっと冷や汗がでる。

 警戒して恐る恐るリボンを解くと箱の中にはもう一枚のメッセージカード


『あらあら、開けちゃったのね。凄いスキルをあげるから気をつけて使うのよぉ。あ、スキルの説明は鑑定眼でも調べることができないからガイドブックに追加しておくわねぇ』


 凄いスキル?

 既にもっている空間収納や鑑定眼、アブソーブもチートスキルといってもいいぐらいなのだが、それ以上ということなのか。


 ステータスで確認すると


 DEBUG MASTER


 と言うスキルが追加されていて鑑定眼を使っても言われた通り何もわからなかった。


 とりあえず、ガイドブックを開くといつの間にかに追加された1ページを見つける。


 ”スキルカテゴリー0 (Cat0)は一部を除きSLやCTなどはありません。”

 ”世界の調整用に使われるスキルです。”


 ”DEBUG MASTER Cat0”

 ”Cat0の全スキルを表示させ使用を可能にします。”


 …


「世界の調整用……なんだ、これ……」


 パンドラの箱を開けてしまった気がして冷汗が止まらなくなる。

 DEBUG MASTERで表示させることのできるスキルとその説明は1ページに収められていたが、どのスキルもスキルと呼べるような感じではなかった。


 ふと英太だった頃のオンラインゲームをしていた時を思い出す。チートに興味が沸いて手を出したことがある。

 連戦連勝は当たり前、どんな攻撃にもびくともせず、相手が諦めるといったようになった。

 何でもできるが、何もせずとも勝てるので途端にゲームがつまらなくなってしまったのを覚えている。

 アカウントも凍結され結局そのゲームは二度と遊ぶことはなかった。


 カテゴリー6のスキルアブソーブはあくまで仕様内、完全無欠に見えても必ず弱点や対策方法があると言うこと。

 カテゴリー0は仕様外、世界の内側ではなく外側のモノだ。それを使うとなればメッセージ通り気を付けて使うしかない。


 凶悪そうなスキルには触れず、まずは大丈夫そうなスキルから試していくことにしようと思う。

 折角この世界を謳歌しようと決めたのだから、自分でつまらなくしては元も子もない。


(色々試さないと。今夜は眠れない)

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート