なんとかついて行こうとするテッテを振り払い、竜車に乗り込みカスケードへと出発した。
道中は平和そのもの。勿論たすモードのおかげ。
1人きりの竜車は暇だ。こんな時は仲間がいてくれたらな。と、ふと思う。
テッテに「わたしがいるじゃありませんの!」などと言われそうだが。一応家族の括りのになるのでちょっと違う。あと、おっさん3人組は私を神だと思っている勘違いファンみたいなものだから、仲間とは呼べない。
「やっぱり仲間は奴隷買った方が手っ取り早いかな」
ハイドのはからいで多めの報酬を貰っている。全額町の復興資金にあてる予定だったが、カジノで儲けたお金もあることだし、半分ぐらいは自分の為に使ってみようと思っていた。
ガイドブックにも奴隷を仲間にするのはアリみたいなことが書いてあったし。
「御者さん!」
「はいよ、何だい?」
「ここらへんで奴隷商で有名な所とかってありますか?」
「奴隷か。そうだなオヴスール盆地になるかのぉ。あそこは国境線が曖昧な場所でな、そこを逆手に取ってこっちの国では非合法な奴隷でも、こっちの国では合法で売れるとかがあるからの。奴隷商人たちが集まって取引しとると聞いたことがある」
「そこに行けば私も奴隷買えるかな」
「当然金さえありゃ。何人でも売ってくれるさ。あいつら奴隷より金の方が好きだからな。もしや本気で行くつもりかの?」
「遠いの?」
「いんや、そんなことはないが今日中にカスケードに着かなくなるぞ」
「だったらオヴスール盆地ってとこまででいいよ。そこから先は私で何とかするから」
「運賃もらってるかなの、そーゆーわけにゃーいかんて」
「大丈夫、気にしないで」
「お嬢ちゃんがそれでええなら、ええけど」
と、言うことで急遽行き先を変更。
奴隷商人の集まるオヴスール盆地に行くことにしました。
盆地というだけあって、山越えをしなければならないので距離的にはそんなになくても時間が掛かってしまい夕方ぐらいになってしまった。
竜車を降りてみて思ってことは、予想以上に人が多かったことだ。これには御者のおじさんも、初めてみたらしく驚いていた。
奴隷を並べている出店が何十件とあり、グルグルと回ってみたが、私のような少女をまともに相手をする奴隷商人などいるわけもなく、ほとんどは商人同士で交渉をしているようだった。
奴隷は分かりやすくところに奴隷の証である奴隷印と、足に重そうな鎖がされている。
中には同じぐらいの子供もチラホラ見えた。
値札が貼ってあるわけではないので、値段交渉の盗み聞きしておおよその額を把握していく。
いい年ごろの見栄えのいい女で、大体金貨400枚~600枚。
これは貴族に買われるのを前提とした。愛人奴隷希望者がほとんだ。
働き手のような男は値段が安く、健康な男で100枚程度。子供は更に安く30枚程度になっている。
亜人族は女なら金貨200枚前後、男は人族と変わらない。
人の命をお金で換算するのがここでは当たり前、可哀そうなどと口を挟んではいけない。
「おっと、ここから先はお嬢さんのような方が来るようなところではありませんよ」
一番奥の建物に入ろうとしたとき、シルクハットを被った男性に止められてしまった。
「これでも一応、冒険者なの」
「そうでしたか、お金はお持ちですか?」
「金貨なら1800枚空間収納に入ってるわ」
「! それは、それは大変失礼いたしました」
「オークションはもう間もなく始まりますので、こちらをどうぞ」
オークションがしたいわけではなったが、気になったので入ることにした。
渡された紙にはオークションに出るであろう奴隷たち。いわゆる奴隷オークションだ。
出てくるもの達の説明が書かれているが、肩書が元○○家の御令嬢だったり、亜人の中でも滅多に見ない妖精族のハイエルフだったりと珍しい奴隷ばかりだ。
本当に合法なのか疑わしいものばかりで、逆にここだからこそオークションが成り立つのかもしれない。
「こちらの人魚、まだ14歳で、とても若い人魚となります。長命な種族であまり子を作らないので、その子供となると希少価値はとても高くなっております。では1000枚から!」
「1100!」
「はい、1100入りました。1100、1100」
「1200!」
「1300!」
「1500!」
「はい、1500入りました。1500、1500」
「5000!」
「はい、5000入りました。5000、5000、5000枚より上ございませんか?」
金額も普通の奴隷たちとは全然違ってくる。最低落札価格は一律金貨1000枚だ。
そこからガンガン上がっていくのだから、金持ちの道楽でしなかい。
「5000枚より上ございませんか?最後のコールです。5000枚より上ございませんか?」
チリチリン♪
とベルが鳴るとその競りは終了となる。
奴隷の中には高く競り落とされて喜ぶ者や、出てくるなり涙目になって俯く者と様々だ。
ここに立つ理由がそれぞれあるのだろう。
「本日最後となりました。注目のヴァンパイアでございます。こちらのヴァンパイアは力を封印されており、殆ど人族と変わりないぐらいまで力が衰えております。なので日光を浴びても焼けどをする程度で灰にはなりませんし、食事も血ではなくパンやドーナツで十分とのことでございます」
(ん! きた、ヴァンパイア!!)
一覧を見たときから気になっていた。気持ちがソワソワしてしまう。
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