転生しても困らない!異世界にガイドブック持ち込みでとことん楽しむ

異世界 わりといい世界
しのだ
しのだ

魔の誕生日④

公開日時: 2022年4月27日(水) 19:19
文字数:2,071

 その日の夜から拠点として活用することにした。


 妖精たちは屋根裏部屋が落ち着くらしく普段はそこに3匹一緒にいる。


 豪邸なだけに部屋が沢山ある。そこでグランジが「1部屋分けてくれ」と調子のいいことを言ってきたが、仲間になりたいわけではなく宿代わりにしようとしていただけなので、金を取ると言ったら諦めていた。


 せっかくなので妖精達と少しでも上手く付き合うために家を改造してみる。見た目はそのままだけどDEBUGMASTERを発動させ家を道具化させ、インタープリターのアビリティを追加させたのだ。

 家の中にいれば誰でも妖精と会話が出来る便利な家の機能になる。


 妖精たちも驚きながら自己紹介してくれた。


 一番気が強く私と交渉をしてくれたプリツ。


「ふん、仕方ないわね、ここまでされちゃ挨拶するしかないじゃない。よろしく」


 警戒心が強く魔法が得意なカプリ。


「変なことしないでよね」


 人族と仲良くなるのが夢だったというポーキだ。


「こ、これから、たくさんお話しできたらいいなって」



 私もゼンちゃんやハクレイも呼んで親睦会的な感じになった。


「お久しぶりですケーナ」


 ハクレイのその声が、1週間前とは別人と思えるほどの自信に満ち溢れていた。

 空間収納内での特訓がどれくらいだったのか訊いてみると、約3カ月ほどになるという。いい感じにタイムが時間調整してくれたみたいだ。


「いつでもダンジョン行けますからね」


 気になるハクレイのLVは61。グラフを超えてしまっていた。




 翌日は、拠点が決まったので、こんどは拠点をギルドに登録しに行く。指名依頼などがある場合は依頼書を送ってくれるらしい。


 宿ではなく、家を持って拠点とするとその町のギルドからの印象も良くなると言われている。信頼関係を築けるということかもしれない。


 ギルドに入ると待ってましたと言わんばかりに1人の受付嬢が駆け寄ってきた。


「ケーナ様ですよね?」


「そうですけど」


「これは大切な招待状です。受け取った証明としてこちらにサインをいただけますか?」


 招待状1つでここまでするのかと思うほど。


「その中の手紙は必ず読んでくださいね」


「はい、そうします」


 いったい誰からの手紙なのかと、封筒の裏を見ると封蝋にあるシンボルがカスケード家の家紋だった。

 ちょっと焦りながらもここでは開封できないと思い、そっと空間収納に忍ばせた。


 登録の手続きを終え、急いで拠点に戻り開封してみる。


 なにやらつらつらと書かれていたが要約すると


 急なお誘いで申し訳ありません。

 次期魔王ケーナ様へ、カスケード家三女エーナ・カスケード13歳の誕生日へのご招待しますのでぜひ来てほしい。


 ということだった。

 誕生日近いことなど知っていたが、私には関係ないと思っていた。

 

(どうしよう。どうしよう)


 動揺で腰が抜ける。

 私の行動によっては現魔王に迷惑がかかるかもしれないと思うと、この辺境伯の招待もむやみに断れなくなる。


 これを受け取った時点で返事などしなくても、行くことが決まってしまっているようなものだ。


(受け取りのサインはこういうことだったか)


 詐欺ではないが罠にかかってしまったような感覚になる。

 7日後にせまった誕生日。とは言え予定など未定なので勿論行けないことはない。


 誘拐事件以降、私の顔が広まってしまったのでエーナとケーナの顔が一緒ということがバレている事も考えると、今更顔を変えるわけにはいかない。


(んー、お面でも付けていくか?)


「どうしました?唸っていたようですが」


 悩んでいる様子を気にしていたハクレイが心配して声をかけてきた。


「ハクレイにお手伝いできることがあれば」


「ねぇ、私の代わりに次期魔王してくれない?」


「え? ケーナが魔王になることは聞きましたが。ハクレイに代役などできません」


「そうだよね。無理言ってごめん」


「ケーナなら立派な魔王になれますよ」


「今回だけは魔王になりたくないんだよ。この招待状の主とはちょっと顔を会わせたくなくてね」


「誰なのです?」


「カスケードの領主。そこから招待状が来ちゃって」


「断るに断れないということですか」


「そうなの」


「でしたら、ハクレイは従者としておともいたします」


「一緒に来てくれるの?」


「もちろんですよ! ちょっとでも役に立てれば嬉しいです」


 ハクレイが一緒というだけで心強い。


 ここは意を決して行くしかなかった。



 誕生日までの数日間の間に、急いで当日用のドレスや小物を買ったり、送り迎えの竜車を手配したり、そして私から私へのとっておきの誕生日プレゼントを用意して最低限の威厳を保つためにお金を使いまくった。




 そして当日。


「結構遅れてますけど、大丈夫でしょうか?」


「いいのわざと遅らせてるんだから」


「誕生日プレゼントは持ちましたか?」


「大丈夫。全部空間収納に入れてあるから」


「では出してください」


 拠点からカスケード家まで同じ町にあるのだから歩いてだって当然行ける。

 それでも竜車を使うのは見栄でしかない。


 到着すると既に多くの馬車や竜車が家の周りに停めてあり、予定通り誕生会は既に始まっていた。規模は大きくないと聞いていたが会場には結構人が集まっているようだった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート