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王位争奪戦⑧

公開日時: 2022年4月4日(月) 21:21
文字数:2,219

 出発前に、今回の報酬を頂くのと、例の親子の件がある。


 マトンは「一体どこから連れて来た」としつこく聞いてきたが、はぐらかしてハイドのもとに向かったのだ。


「ケーナが合わせたいというから、何か事情があるとは思っていたが、これは想定外だぞ」


 あった瞬間に、親子に対して見破るを使ったのだろう。

 こちらが伝える前に察してくれたようだ。話が早くて助かる。


「セバステ、この母親をここで働かせろ。お前の管轄だ、ちゃんと見てやれ。そして子供は騎士見習いとし騎士団で預かる事とする」


 いくらなんでも勇者とはいえまだ子供、低レベルなのに騎士見習いはキツイと思う。

 だがハイドがそんな酷いことはしないと思い、ノルクのステータスをみるとみごとレベルが20も成長していた。


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 ノルク・ステビア 男 6歳 幸運の勇者


 LV24 HP47 MP25

 STR 68 VIT 38 MND 12

 SPD 10 DEX 10 INT 10

 LUK 999


 スキル

 福音の恩寵A+ 起死回生A+ 剣術の心得F


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 この数日で仕上げてきている。ゼンちゃんが面倒を見るとはいってたものの期待以上の成果を上げてきた。


「ありがとうございます。王様!」


「は! は! は! まだ気が早いぞ小僧」


 勇者の保護はこれで大丈夫だ。ハイドならノルクに近づく者を見極められるし、騎士団の中にいればいざという時も守ってもらえる。そして自分自身が成長できる環境があれば自然と強くなるだろう。

 流石幸運の勇者だ。


 ⦅ぼうずに渡してほしいもんがあるんけんど、たのめっか?⦆


 ゼンちゃんからの念話。

 アイテム一覧に新しいものが増えている。ノルクへのプレゼントだろうか。


 ⦅それおよ。師匠からだってことで渡してくれぇ⦆


 コソッと取り出し、取りあえず鑑定


 ”プラチナリング エピック”

 アビリティ:ステータスコンシール

 追加効果:物理耐性、魔法耐性、腐食耐性30%アップ 


 細い腕輪型のアイテム。素材はもちろんプラチナスライム製だ。

 短い付き合いでも師弟関係を結んでいたのだろう。弟子思いのアイテムだ。

 しかし誰に似たのか、高価な物をほいほいとあげてしまっていいのだろうか。


 まぁ、ノルクがこれを売ることはないだろうと信じて渡すことにした。


「はい、コレ、師匠からの贈り物だよ」


「え、師匠が! ありがとうございます! すごく嬉しいです!」


(いい子だなぁ)


 魔物にも好かれるなんてほんと幸運。

 このまま真っ直ぐ育っていってほしい。



 最後は多くの人に見送られ王宮を出ていくことになった。表向きは一応

「婚約破棄」

 どこかの悪役令嬢にでもなった気分だ。直ぐにハイドには素敵なお嫁さんが見つかるだろう。


 どうせなら姉さん女房のネイトレスがいいと思う。

 着飾って喋らなければ誰も騎士だとは気づけないぐらいの見た目してるし、なにより嘘とかつけないタイプだし。


「あいつら、くっついちゃえばいいのに」


 なんて独り言。



「ハイド坊ちゃま。ケーナ様ご一行はルクセンブルク領を出ていかれました。予定通り追跡はそこまでとなります」


「ご苦労。セバステに2つ質問がある」


「なんなりと」


「まず1つ目だがセバステはケーナを殺せるか?」


「それは命令でしょうか?」


「違う、仮に敵対した場合の話だ」


「そうですね……。ナインドールを使い、1対10に持ち込めたとしても万に一つも勝てないでしょう。ハイド坊ちゃまの為にどう命を賭けるかを考えます」


「それでいい、勘は鈍ってないようだな」


「ありがとうございます」


「ケーナの髪飾りに化けていた、未知のスライムでLv393。更にテッテと呼ばれていたあの娘、テッテ・ベルクス、魔王の娘であろう。半人半魔でありながらLvは271。その者達と普通に接している少女がLv10なわけはない。見破らずともそれくらいは分かる」


「異様な気配は髪飾りからでしたか。しかしLv393のスライムなど聞いたこともありません。種族によるレベル上限をゆうに超えてます」


「特殊個体であるのは確かだろうが、それでも疑問が残る」


「ケーナ様の前に、スライムにも勝てないかも知れませんね」


「昔は武神と豪語していたセバステがスライム相手に弱音とは、これは面白いぞ」


「おやめください、坊ちゃま。それは100年も前の話ですよ」


「今回偶然ではあったが、悪くはない関係を持てたと思うぞ。それに魔王の娘が簡単に王宮内に侵入できることも分かったしな。は! は! は!」


 いつもの高笑いで一区切りとなる。


「それともう1つ、俺のスキルで見えぬ者がいたのだが」


「ケーナ様に続き3人目ですか」


「それが、近衛騎士の格好をしていたんだ」


「近衛騎士でしたら全員顔を存じてます。特徴を言っていただければ」


「女だ」


「王宮内で見たとなれば、ネイトレスしかおりません」


「そうだろう。ネイトレスは知っておる。だが以前とは顔つきや体つきが変わっているような気がするのだ。それで同一人物か調べるためにスキルを使ってみたのだが全く効かなくてな。それどころか、そのネイトレスを見ていると落ち着くというか何というか……一体なんなんだ奴は」


「侵入者の情報は入ってきておりませんが、念のため某がお調べ致しましょう。ネイトレスとは仲のいい間柄ですので、2人しか知らない話などがござます。それで探りを入れてみましょう」


「任せた」




 ここから数年後、とある吟遊詩人が、どこかの国の王とその王を守る女騎士が、恋に落ちた詩を歌っていたそうだが、現実離れしすぎた内容であまり人気がなかったらしい。


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