以前受付嬢に素材にならないとバッサリ切り捨てられてしまったが、そんなはずないと鑑定眼で改めて調べたとき気づいたのだが、やつは死んでなかった。戦闘不能の状態で停止されたままだった。戦闘不能後1分間で必ず死とはならず、個体によってはもっと時間がかかる場合もあるということだ。
それに素材としては優秀なことは間違いないみたいだが、買取されないのであれば死なせてしまうより他に役立てないかと考えた末、使役(テイム)をして見ようと思ったのだ。
しかし、ガイドブックによるとHP0からの回復は町で売っているポーションではどうにもならないのでレア以上の回復薬を使用することになる。調合う自体はどうにかなりそうなので材料を調達使用と思っていたのだ。
更に自分で調合することが使役するのに必要な魔力の受け渡しが出来ると考えている。プラチナスライムは魔法に完全耐性を持つモンスターなので、攻撃魔法は勿論回復魔法も弾くほどなので通常の魔力渡しでは弾かれかねない。
だからポーションに自分の魔力を混ぜ、魔力の受け渡しも可能になるのではと思ったのだ。回復と魔力の受け渡しそして使役できればどや顔できそうな気がする。
ギルドを出ると先ほどの三人組が道の隅に避けられていた。吐血と打撲、HPは残っていようだが気絶させられて動けないでいるみたいだった。
(グランジってもしかして結構強い?)
昼前に東の森、別名薬草の森に到着する。それだけ薬草が良く取れる森らしい。受付嬢によるとモンスターはやや強く、無理に戦わない方がいいらしい。目的が薬草採取なのでまずは感知Fを使い周辺を調べるが、探索Aの範囲に慣れていたのでやたら狭く感じる。それでも薬草を探すことに不足は無かった。
ギルドに納品する分は自力で薬草40束を採取。これでやっと1000メルク。空間収納にしまい。ここからスキルで採取をする。
要領は感知で薬草を見つけ近いものからアブソーブで取り込み薬草を分解、回復の元となる原液を抽出、魔力を混ぜたら水筒にどんどん入れていくといった具合だ。
予想と違っていたのは薬草10束程でも数滴しか抽出できなかったことと、魔力は混ぜようと思えばいくらでも混ぜる事ができるということだった。
しかも混ぜれば混ぜるほど液体が光を帯び、面白がって魔力を込めていたら魔力疲れを起こすほどだった。
「ちょっと休憩、もう結構抽出したよ。でもまだこれだけ。で、どんな回復薬か見てみるか」
”完全蘇生薬 ミシクル級”
”如何なる状態でも魂の再構築と肉体の再構築をおこない、病や呪いその他の状態異常を全て取り除き健康な状態にし、不老となります”
「おとぎ話かよ!!」
不死でなくても不老であるだけでも相当なもの、どこぞの王様とかが喉から手が出るほど欲しがりそうだが、不老であるこが必ずしも幸せとは限らないので水を足して薄めてみる。
”完全回復薬 エピック級”
”体に魂が残っている状態であれば体力を全快にします。欠損部位の回復も行います”
これなら大丈夫そうなので早速プラチナスライムにぶっかけてみる。
プルルンと揺れる表面。もぞもぞと動き始める。逃げる様子は無い。魔力渡しが上手くいっていくれれば使役となるのでステータスを確認してみる。
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エーナ・カスケード 女 12歳 駆出し冒険者
LV905 HP55978 MP126580
STR 2582 VIT 8658 MND 27936
SPD 902 DEX 1480 INT 36511
LUK 132
スキル
異世界言語A 空間収納A 鑑定眼A 隠蔽A 探索A
アブソーブS 探究A 剣術の心得F 盗みのいろはF 感知D
調教の心得A 調教の達人 錬金術の心得A 錬金術の神髄
毒耐性F 麻痺耐性F 疲労耐性B 病耐性D
DEBUG MASTER
属性魔法適性
火、水、風、雷、聖、闇、空間、時間
加護
精霊の加護
使役
プラチナスライム(仮)
アイテムボックス
薬草40
ドレス1
メイド服1
簡易地図1
食パン1
干し肉1
寝袋1
異世界ガイドブック 1
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「ん?仮?なんだこれ?」
⦅おっす!!⦆
頭に響くような声に驚きあたりを見渡すが誰もいない。
⦅下見ろ下!⦆
「…え?」
⦅おめぇ、助けてくれたんだろ⦆
足元のプラチナスライムが意思がスキルによって会話へと変換されたようだった。
「あ、はい。そうです」
⦅ありがとなぁ。いつの間にか死んでたみてぇだ。すげぇ量の魔力まで分けてもらって申し訳ねぇ。オラ体質的に魔力の回復手段が無くていつも困ってたんだ⦆
「あ、いえいえ。たくさんあるんでお気になさらず」
⦅そっか、じゃな。またどっかで会おうな⦆
「え、っちょ待って」
⦅まだなんかあんか?⦆
「あの使役したいんですけど」
⦅あ、オラをか⦆
「そうです」
⦅めーったな、オラあんま人にあーだこーだ言われるの好きじゃねーんだ⦆
「ダメでしょうか」
⦅そうだな、見逃してくんねーか、な!⦆
まさかモンスターから使役解除の申請が来るとは思わなかった。いつの間にか追加されていた調教の心得A程度ではプラチナスライムは懐かないってことなのか。
「ならせめてビジネスパートナーになってください」
⦅なんだ、そのビジネスなんちゃらってのは⦆
「そのですね―。」
使役は早々に諦めた。性格の不一致ということにしておこう。でも折角モンスターとの繋がりができたので切ってしまうのは勿体ない。と言うことでお互いに得をする関係であればいい関係が持てるのではと考えた。
森でとれる薬草やその他のアイテムなのどを集めてもらう、その量や物によってプラチナスライムに魔力を提供するということだ。
「いかがでしょう?」
⦅いいなぁそれ、のった。魔力を気にせず使える生活に憧れてたんだ⦆
「場所はここで、取りあえず週一回会いましょう」
⦅おう、任せろ⦆
「今度は簡単に死なないでくださいね」
ここに空間魔法の出入り口を決めておけば簡単に行き来できる。あとは取引をするだけなのでいい収入になりそうだった。
ちなみにこのプラチナスライム、トクゼンウと名いう変な名前があるが、呼びづらいのでゼンちゃんと呼ぶことにした。
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