浮島と呼ばれる伝説の島。
子供たちが知るおとぎ話ではロンバルディアと呼ばれ、そこには神が住み、神が人悪を見つけると天罰を下すと言われてる。
古い文献ではアデバルディアと呼ばれ、魔石と魔術で作られたその浮島は、過去の大戦で使用され国を一夜で焦土にする火力と、あらゆる攻撃を弾くとされ空に浮く要塞として恐れられていた。
浮島に関する詳細は全て失われ、今は文献の中にしか存在しないはずだった。
その浮島のせいで日蝕のように辺りは薄暗くなり、それに気づいたカスケードの町に住む者は皆空を見上げ眺めている。
「ってか浮島実在したんっすね。てっきり作り話かと思ってったす」
「本物だとしても、島を相手にしたことなんかねーよ。アレやばい。逃げるぞ」
どこまで逃げればいいのかも分からないが、それしかできない。
遠くでは魔術師なのか、浮島めがけファイヤーボールを放つ者も見えたが全然届くはずもなかった。
浮島があまりに巨大なため遠近の感覚がおかしくなってしまい、ずっと空高くにあるはずなのに弓で届くような距離に感じてしまっていたからだ。
ギルドでも対応に追われヘッケンやマナが対策を練っているが、情報が少なすぎる今ただただ焦っていた。
「今ある情報を整理しするわ、ブラックベヒーモスもあの浮島も召喚魔法結晶で呼び出された可能性は十分あるとみていいわね?」
「そうだな、突然現れたとしか考えられない」
「ブラックベヒーモスは倒されたという話の確認は取れたの?」
「まだだ。でもそろそろ戻ってくるから分かると思う」
「被害の報告はある?」
「幸い死者は今のところ発見されてないようだ。建物はいくつか倒壊したが、けが人は10人程度だ」
「はぁー。ミシクル級なんてただ高価なだけだと思っていたのに、国はこんなものをいくつも隠し持っているの?」
「召喚魔法結晶は通常の召喚魔法とは違って一度呼び出したら戻せないんだ。使わない限り確かめようがないから、鑑定人の言葉を信用するしかない」
そこに息を荒げたギルドの職員が駆けつける。
「報告!ギルマス!確認しました。ブラックベヒーモスは2体とも討伐!死亡を確認しました!」
「よし!」
「これで残るは上に浮いてるデカブツね」
ペガサス騎士団に要請しよう。
ワイバーンをテイムしているテイマーを集めよう。
魔術師協会に応援を要請しよう。
など、考えては見たものの窓から見える浮島と比較すると全て幼稚に感じてしまい行き詰ってしまった。
いくら考えても解決策など出るわけもなく、時間だけが過ぎていく。
そんな時、窓から見える浮島が光始める。
今まで薄暗さと逆光のせいで気づけなかったが、浮島のそこには巨大な魔石が数多くも敷き詰められており、それが今光始めたのだ。
魔石が光ると言うことは、魔力が流れているということ。
魔力の流れは底の中心部に集まるように、まるで脈を打つように光が流れていた。
底の中心部は魔力が徐々に集まり輝きを増してきている。
ここまで来ると多くの者が相手が敵であること理解し始める。逃げ惑うものも多く町中がパニックに陥った。
魔力の輝きが太陽を越え、熱が地上まで届いてくる。
そして、魔力の流れが止まり、中心部の輝きが最高潮に達すると、浮島の底から魔力の塊が切り離されように落ちてくる。
ゆっくり落ちてくる輝きは神秘的でもあった。
もうヘッケンもマナも身を寄せ合いただただ祈るしかなかった。
誰もが諦めたであろうその瞬間に、魔力の塊めがけ一直線に超音速を超えて飛んでいく物体。
この町のガキ大将、もふもふ猫君2号だった。
上空で交差すると、煌々と輝いていた魔力の塊徐々に小さくなっていき、最終的には消滅、そして浮島も一瞬で消えてしまった。
一体何が起こったのか。誰も真相を知ることができず。また神のご加護だと噂が流れた。
実は実家のコピーエーナも一連の事態は把握していたが、黒幕を探すためもふもふ猫君1号を出動させ必至にあちこち探索スキルで調べていた。
ダミーが多く重要人物と繋がりを持ってそうな奴は結局捕まえる事ができずじまい。
ブラックベヒーモスが暴れ始めた時は倒しに行こうか迷ったが、近くに高レベルの冒険者がいたので任せておいた。
しかし、浮島が現れて、黒幕探しどころでは無くなってしまい屋敷で様子を見ていたが、超高出力の魔力が降ってきたのでもふもふ猫君2号を落下地点まで投げ飛ばしアブソーブで全て吸収したのだった。
緊急出動のために取得しておいた投擲強化SSS+が大いに活躍できたみたいだった。
浮島も破壊してしまおうと思ったが、あれが落ちてきたときの被害を考えると収納するしかなかったのだ。
「あー、あんなデカいのしまったら、ケーナに怒られるかな……」
空間収納の中で何かしているのは知っていたけど、まだちゃんと確認していなかったので、邪魔してしまったのでわないかと心配していた。
浮島が消えた後も、直ぐには喜べなかった。またどこかに現れるのではないかと不安が拭えなかったからだ。
死を覚悟したヘッケンは生き延びれたことに安堵し、本当に神の奇跡として疑わなかった。
「まだ神は見放してはいなかった。そうだろう?」
「この際、神でも誰でもいいわ、助けてくれたのだから感謝しかないわよ」
必死で逃げていた2人の男も足を止め空眺めていた。
「消えたっすね」
「どこいった?」
と、そこへ走って近づいてくる、猫の着ぐるみ。
「ブラックベヒーモスを倒した力を見込んでお願いがあるのだけど、私と組んでくれないかしら?」
と唐突に勧誘しに来たのだった。
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