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迷子の句読点
迷子の句読点

【第三十五話】正体

公開日時: 2024年8月23日(金) 21:06
文字数:1,188

 Group Emma。プラムとアローが所属する組織の名。表では一民間企業として化けの皮を被っており、実際は反社会勢力と呼ばれる裏社会の組織たちと何ら変わらない行動でビジネスを展開している。

 ………それは間違いなかった。その実、アローは以前、ベルの命令により古着屋『Second Ocean』のオーナーを勤める柴崎という人物を射殺している。プラムに至っては、黒川翔斗の護衛任務遂行のために、世界的暗殺組織『ALPHABET』のBとCを殺している。

 直近の紛争だけでも3人……過去に遡れば、Group Emmaの雑用係として窓際社員のような扱いを受けるプラムとアローでさえ、始末した人数は数えきれない。しかし……。




 警視庁 公安部 公安第五課及び外事第四課による特別合同捜査組織。




 たった今そう告げた、ベルの鋭い眼光。プラムとアローの理解力は、一瞬停止してしまった。


「……え? 何スか?」


「け、警視庁? 何でいきなり警視庁?」


 プラムもアローも、突然ベルから飛び出してきた警視庁というワードに動揺している。ベルは、にやりと笑った。


「これが、Group Emma日本支部の本当の名前よ」


「警視庁……? 警察? アタシら、警察だったんスか?」


「厳密には、警察と手を結ぶ裏社会組織という位置付けになるわね。警視庁の組織として活動はしているけど、私たちも彼らの監視下にあるわ」


「な、何ですかそれ〜」


 アローの頬に汗が垂れる。青白く光り、画面にGroup Emmaのロゴマークを映し出す数々のモニターを背景に、エマは目を細めた。


「世界の治安を脅かす可能性がありながら、実際の違法行為を掴めないグレーな組織。法の網目を掻い潜り、善良で無知な市民を食い物にする悪党共。……世界には、そういう奴らが大勢いる」


 エマの眉間に、わずかに皺が寄る。


「警察からは越権行為として手出しができない、世界を混沌に陥れる恐れがある組織を、正式な手続きを全て無視して可能性から根絶やしにする。それが我々の仕事よ」


 プラムがごくりと喉を鳴らした。


「え、じゃあ……アタシらが今まで対決してきた奴らって……」


「もちろん、日本の治安を根底から脅かす可能性があった奴らよ」


 アローも驚きの表情が隠せない。


「裏社会と手を組まないと犯罪すら取り締まりきれないって、警察も腐りに腐ってますね〜」


「この世に、もともと法などないわ。あるのはカタチだけ。世界の本質は無法であり、戦争は正にこれを的確に表している。……厳正な法のもとに終結した戦争など、ただの一度も無かったのよ」


 淡々と語るエマの、不敵な笑み。プラムは、ごくりと喉を鳴らした。


「まぁ、そうやって警察権力に擦り寄ってビジネスをする私たちこそ、よっぽど悪党なんだけどね」


 にっこりと笑うエマに、プラムとアローはなぜか、気圧されるしかなかった。









 ……………。

 何とも言えない、不気味な静寂が、プラムとアローの間を流れて行った。


 








 

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