警視庁 公安部 公安第五課及び外事第四課による特別合同捜査組織……。Group Emmaの正体。自身たちの真の姿を知ったプラムとアローは、細長の円卓の対に座るエマとベルが、今まで以上に不気味な存在に思えた。
すると、唐突にベルがケラケラと笑いだした。
「どう? びっくりしたでしょ。今まで黙っててゴメンね。アンタ達やらかしまくるから、なかなか言えなかったのよ」
「え〜、ベル姉ひどーい」
頬を膨らますアローの隣で、プラムはふと、過去のことを思い出していた。それは、自身がGroup Emmaに入る前。当時の自分の立場と、Group Emmaの正体に深い関わりがあるのではないか。そう実感していたのだ。
「さて、私たちの正体も知ってもらったところで、新任務の説明をしなきゃね。ベル、よろしく」
エマが言うと、ベルは軽く返事をし、モニターのリモコンを操作した。すると、壁に貼り付けられたモニターの画面が映り変わり、何やら細い長い、少し歪な形をした図形のようなものが出てきた。シルエットのみ表示されており、色は真っ黒。何なのかは分からない。
「これが何か分かるかしら?」
エマの問いに対して、プラムとアローは首を傾げた。見たことあるような、無いような……。
「はーい!」
「はい、アローちゃん」
エマに指名されたアローは立ち上がると、胸を張って解答した。
「ミドリムシでーす!」
「ぶっぶー。ぜんっぜん違うわよ」
「えー!」
「プラムちゃん、分かる?」
呆れるエマが、プラムに解答権を与える。プラムは顎に手を添えてしばし唸ると、やがて目をカッと見開いて答えた。
「これはうんこっスね」
「このバカ」
ため息をついて呆れ果てるベルとエマ。ベルは、正解を示すためさらにリモコンを操作した。すると、モニターの画面には大きく種子島という文字が出てきたではないか。
「正解は種子島よ」
「あー、種子島か〜!」
「そっちかー。うんこか種子島かで迷ったんスよ」
「アンタ種子島の人たちに謝ってきなさい」
あたかも、種子島というワードを解答の候補として控えていたかのような態度をとるプラムとアローに、より一層頭を抱えたくなるベルだが、エマはにっこり微笑むだけだった。
「総面積445km2のこの島の東南端に位置する、種子島宇宙センターという場所で最近、39委員会がウロチョロしてるのよ」
「また39委員会ですか」
プラムが言うと、ベルが真剣な眼差しを向けた。
「奴らは現代戦を裏で操る終末思想の戦争屋よ。何としても、私たちが潰さないといけないの」
39委員会は、以前もALPHABET絡みのトラブルで、大阪支部とベルが率いるGroup Emma日本支部との間で激しい抗争があった。
「39委員会は、種子島宇宙センターを乗っ取って大崎射場から人工衛星を打ち上げようとしているわ」
「人工衛星?」
プラムが聞き返すと、エマが真剣な表情でこれに応えた。
「世界を混沌に追いやる、最悪の兵器よ」
「最悪の兵器……」
「ええ。コレを食い止めなければ、世界はあらゆる情報を遮断され、全ての流れが止まり、人々は飢えに苦しむことになる」
餓え……。
プラムとアローの脳内に「飢」の文字がハッキリと浮かび上がる。39委員会が、種子島宇宙センターを乗っ取ってまで発射しようとしている人工衛星には、一体どれほどの脅威が眠っているのか。2人は、未だ完全に理解仕切れていない。
「飢えが呼ぶのは戦争。39委員会の描く未来に、子どもへの愛も、全世界の繁栄も無い。あるのは利益。目指すのは世界征服。奴らは今、この世で最も危険なクソ野郎よ」
眉間に皺を寄せるエマは、そのままニヤリと笑った。そして、力強く声を発す。
「プラム、アロー」
「はい」
「はーい!」
「種子島宇宙センターに潜入し、人工衛星の打ち上げを阻止するサポートをしなさい。これは、Group Emmaと39委員会の戦いである以前に、世界と奴らの戦いでもあるわ。あなたたちに、世界の命運が懸かっている。私たちの最後の戦争よ。絶対にやり遂げなさい。あなた達は、世界最強のポンコツコンビなんだから」
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