タキオの事……??
俺は唯さんの思わぬ一言に動揺した。
唯さんは、タキオのデザインの引き継ぎをしてもらっているから別にタキオの話でてもおかしくは無い。
だけど、俺にとってタキオは、唯一本当の事を知っている存在だった。
俺は動揺を押し殺し、唯さんに尋ねる。
「あー、引き継ぎの事ですか?」
「は、はい。そうなんですけど、まひるさんに聞きたい事があって……」
俺は少しホッとした。
「あー、それなら何でも聞いてください」
ただ、唯さんは少し暗い顔になると探るように聞き始めた。
「タキオさん、亡くなる直前何か変な事言ったりしてましたか?」
「タキオさんが? 特には無いですけど、どうしたんですか?」
「フェスに影響が出るといけないので、今まで言わなかったんですけど、資料の中に死を予感していた様なメモがいくつかあって……」
死を予感? なんだよそれ。
まさかタキオは知っていたのか?
「なんでわたしに?」
「その中にまひるさんの名前もあって、仲よさそうでしたので……」
「なるほど、タキオさんとはわたしが一番仲よかったと思います。それで、どんな内容だったんですか?」
俺の心臓の鼓動が速くなるのがわかる。
「デザイナーになるまでの経緯なんかは山野さんにも聞いていたので、ちょっと厨二病なのかなとも思ったんです……」
なるほど、でも奴は厨二病では無い。
俺はその言葉で、転生の事だと確信した。
「そんな所あったかもですね! 天才の生まれ変わりだとか言ってましたし!」
「やっぱり……他にはどんな事を?」
「あー、いや……僕のデザインで世界を変えるとか?」
この人はどこまで知っている?
メモには何が書いてあったんだ?
すると唯さんは話しを変えた。
「わたしが白夜堂に入社した時、面倒を見てもらっていたアートディレクターの先輩がいたんです」
「聞きました! タキオさんにデザインが似てるって言う……」
「その人の仕事はとても早くて、いつもどうすれば他のデザインと差別化出来るかを考えなさいと言ってました」
「タキオさんも似たような事言ってましたね、やっぱり似てますよね……」
「はい……メモの書き方も、筆跡も……」
「……」
筆跡!? この人はどこまで気づいている?
「まひるさん、はぐらかさないでください。まひるさんがうちに頼んだ理由……」
やっぱり気づいている。
タキオの事だけでも言ってしまおうか……。
「タキオさんは梓マネージャーの生まれ変わりなんですよね?」
「……」
「やっぱり……なんで……」
唯さんはその場で泣き崩れてしまった。
「唯さん、気づいていると思うけど、メモには何が書いてあったんですか?」
唯さんは泣きながらノートの切れ端を俺に渡した。
そこに記された内容は、俺のタイムリミットを明確にするものだった。
〜〜〜
魂のカウントダウン
願いを叶える魔法のサイト。
3年後一番理想に近い人になれる魔法。
入れ替わるのでは無く、なれる。
3年以内にその人物を超え無ければならない。
タイムリミットが来たなら英霊の意識は
"消滅する"
どちらにせよ私は消滅する。
この事はまひるさんには伝えないでおこう。
〜〜〜
消滅する。
理解はしていたが、頭の中が真っ白になった。
俺のタイムリミットは、このメモによって死のカウントダウンになってしまった。
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