「今日のライブも最高らね! 俺出たくなっちゃったよ!」
源さんはそういうと、シグネイチャーモデルのギターを構える。
「でもね、源バンドは今日来てないんだ」
そう言って、源さんは歪ませず、ギターを鳴らす。
「こんな、最高のメンバーに支えられて、幸せだと思う……ステンバーイミー、ステンバーイミー〜」
そのままスタンドバイミーのカバーを弾き語り始め、空気が変わる。
すると、途中で歌をやめ、
「やっぱりバンドの方がいいらね?」
(わー!)
「声がちいせぇなぁ、人気ないらか? ちょっと人気ありそうなのを呼ぶかぁ、可愛いほうが絵になるなぁ、まひちゃんちょっときて?」
(わー!)
えっ! 俺?
俺は近くまだ片付けてない"マスたん"を手に取りステージに立つ。
(何ひける?)
(源さんの曲は大体行けます!)
(おー、OK! 適当にあわせて!)
(はい!)
それから雅人とマイニングのベースを呼んだ。
「ドラッドと、ジャマイカンはいつもやってっから今日はこれで! 準備はいいらか?」
(おー!!!)
「やっぱり人気者はちがうらね!」
そして源さんはリフを始め、俺はそれに乗っかる、荒々しいギターの威圧感が心地いい。
そして会場はまた、熱気に包まれぐちゃぐちゃになった。
このメンバーでも浮かないなんて、雅人も上手くなったなぁ……
まさかマイニングと一緒にするとは……
元仲間やライバル、そしてギターヒーロー。
源さんは、"そんな事どうでもいいから一緒にやれば楽しいらよ"そう言っているような気がした。
♦︎
俺は中学1年の始めの時にギターを買った。
お年玉の残りや、小遣いを掻き集め買ったのは廉価版のストラトキャスター。
あの頃、世の中はバンドブームでビジュアル系の全盛期、ラジオや音楽が好きだった俺は、聖飢魔Ⅱや解散したXJAPAN、またhideが始めたきっかけになった。
中学2年の頃、洋楽に手を出した。
メタリカやスレイヤーなど、海外のクオリティにやられた。スリップノットが流行りだしたのもその辺りかな。
その頃、日本で出てきたのが源さんたち。
高校生になり、パンクが流行りだした頃に解散した。
あの頃、俺はバンドが楽しくて、俺のギターで世界をハッピーに出来ると本気で思っていた。まぁ、メタルとハードコアという、ハッピーとは掛け離れた様な音楽だったんだけどね!
いろんな葛藤や、世の中の理不尽な事に俺は抗っていただけかも知れない。
でも……
俺はこのライブで1つの答えを見つけた様な気がしたんだ。
♦︎
その日のライブはその後、ジャマイカン6がしっかり締めてライブが終わる。
源さんは、最後に俺たちにこう言った。
「その音楽で戦え!」
よく意味は分からなかったけれど、取り敢えず後押ししてくれたんだろう。
数日後、西田さんから連絡があった。
「まひるちゃん、ちょっといいかな?」
「西田さん、どうしたんです? フェスの話ですか?」
「それなんだけど、"ハンパテ★"はAIRも京都フェスも出れなくなった」
「は? なんで?」
源さんも、タクミさんも絶賛してくれたのに……。
その意外さに俺は息を飲む。
「ただ、フェスは一つ、意外なところから来ている、サマーフェスティバル2ndステージだ……」
サマーフェス2nd? インディーズが出ているなんて聞いたこと無いけど?
「すまないがなんでなのかは僕もわからないんだ、あの後好印象だったのは間違いないからね……ただ、チャンスだと思ってサマーフェスに意識を向けて欲しい」
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