おまじない? それじゃやっぱりきっかけになってたって事なのか?
「僕の予想は大体当たっていましたね。まひるさんは実は戻りたく無いんじゃないですか?」
いざ言われてみると、正直ひなやかなとこのまま音楽を続けたい気持ちが無いわけじゃない。
だけど、まひるちゃんの事を考えると消滅しているだけなのは可哀想すぎる。
「期限までにどうにか、本当のまひるちゃんが過ごして行ける様にしたいよ」
「それならそのまま頑張って下さい。 僕は目星が付いた今は、元の自分に挑戦しようと思ってます」
タキオはそういうと、肩をポンポンと叩き「完成です!」と言った。
という事は、タキオの調べた結果としてはやっぱり戻れるのか?
もっと聞きたかったが、撮影の時間が迫っていた。夜にでも電話してみるか……。
♦︎
撮影が終わり、ライブハウスに着くとタキオはカメラの設置場所を探す。
「リハで時間貰ってるので、本気で3回通してください!」
リハで接写、本番で雰囲気を撮り、編集する予定だ。
なんか、不思議な感じがするな。
動画を撮り終えると、タキオは動画をこまめにチェックした。
「よし、OK! 後は本番よろしくお願いします!」
タキオさんって動画は苦手だったんじゃないのかな? そう思った時、さっきの言葉が蘇った。"元の自分に挑戦"とは、そういう事なのかもしれない。
タキオさんは、パソコンを取り出すと何やら作業を始めた。
「まーちゃん、タキオさんなんか雰囲気変わったよね?」
「うん、元々仕事には熱心な人だけど、あの独特の自信みたいなものが無くなったきがするよね……」
ひなも感じている、本来のタキオはこうだったのかもしれないな。
"元の自分に挑戦"それは俺にだって言える事だ、元に戻るのならスタジオミュージシャンのドアを叩くのもいい。
かなの意識もあの日以降変わったと思う。
なんというか、隙がない。
「かな、無理してない?」
「大丈夫やで? 早くばぁちゃんにうちらがテレビに出るとこ見せてあげたいねん」
「うん!」
「やから、悪いけどまーちゃん達も協力してもらうで?」
「もちろんだよ! でも、協力じゃないよ。わたしの夢だからね!」
その日のライブも、俺たちの実力を示すだけの事は出来たと思う。
打倒GUN WITH A MISSIONそのライブまで着実に進んでいた。
♦︎
その日の晩、俺たちは西田さんとタキオと一緒にご飯を食べていた。
「えーと、今のうちに。 今日撮った動画を当てはめてみたんですけど一回見てもらえますか?」
そういうとタキオは、パソコンを開くと編集中の動画を見せる。
「モーショングラフィックと、ライブの動画を合わせてます、まだ音を合わせてないですが……イメージはわかるかと」
音の無いその動画は、もう完成している様なクオリティだった。
「すごい、これはいい!」
3Dと2Dが合わさって、1つの動画作品の様だ。動画は数日で完成するとタキオは言う。
タキオの仕事のスピードが尋常じゃない。
俺は夜今日の話をするために、ホテルのロビーで電話を掛けた。
「あー、電話来る気がしてました」
「あれじゃ気になりますよ……」
「そしたら僕が調べた内容を教えてあげます」
そう言うとタキオは話してくれた。
ネットが盛り上がり始めた時代に誰かが作った「願いを叶えるサイト」というのがあったらしい。過去のサイトを見れるツールでも少しの形跡しか残っていないらしいのだけど。
その中に"自分を変える方法"という言う型で、その手順が記されている。
タキオとまひるちゃんは多分何かしらの方法でこの手順を手に入れたのだろう。
内容は、
1.なりたい自分をイメージする。
2.今自分が考える一番難しいことをする。
3.記録にのこる何かで5日以上"魂のカウントダウン"をおこなう。
4.その事を仲のいい友達2名以上につげる
そうする事で3年間なりたい自分の能力が得られると言うもの。
「そしたら3年で切れる魔法のギターみたいなものなの?」
「僕の見解では、その間の経験は蓄積されるのかもしれないと思っている」
今の状態で得た知識や感覚なんかは残るという事なのか?
「それならちょっとは戻った後も弾ける可能性もあるの?」
「まぁ、こればかりはなんとも言えないのだけど……そもそも転生してないかもしれないとも考えている、Xデーを過ぎるとハイブリッドになるのかもしれない」
「なるほど、だから過去の自分を超えると言っていたのか……」
「今出来ることが繋がるなら、出来るだけの事はやっておきたいからね」
俺が当初考えていたパターンとは違った答えだった。"ハイブリッド"……たしかに記憶が融合する可能性も有るのか……。
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