アマチュアとインディーズの境目。
関わる人で変わる部分は沢山あるけど、センスや技術が急に上がる訳じゃない。
今、一番気をつけないといけない事は、インディーズがスタート地点だというのをひなやかなにも理解してもらわないといけない。
まだまだ俺たちは知られていないんだ。
♦︎
次の日、俺たちは新曲のアレンジを完成させるために、スタジオに入った。
この曲で大切にしたいのは音での世界観。
曲のベースは弾き語りなのだけど、バンドサウンドに落とし込むには、その世界観を3人が意識を合わせる必要がある。
それぞれの楽器でその世界観を表現できれば、きっと曲は完成するだろう。
俺は現時点でのアレンジを確かめると、それぞれの音がまとまったのを感じた。
「わたしは、この曲を作った時、自分の知っている世界はまだまだ一部なんだと思ってこのフレーズが出来た」
「うちもツアー行ってめっちゃ思ったわ。大阪だけでも見えへんとこで色々動いとるんやなって」
「そう、それを部屋でなんとなく考えている様な場面を切り取ったのがこの曲のイメージかな……」
「なるほどねぇ、そう言われるとわかる気がするよ! 自分の見たことのない世界に沢山触れて、まだまだあるんだろうなぁーって」
「ちょっとうち、アレンジ変えてみるわ」
「あたしも!」
曲作りは"音を紡ぐ"という表現を良くする。
この時、ふと3つの糸が紡がれるような感覚があった。
イメージから曲を作る。
かのエリック・クラプトンは、息子を失ったとき、Tears In Heavenという曲を書いた。
その場の感情、エリック・クラプトンが自身の運命を乗り越える心境やその世界観は、あの名曲の雰囲気だったのだろう。
こうして俺たちの新曲は、形になった。
まだまだ見えない世界への1つの挑戦。2人が加わることで、情景の描写からの希望と言った様に続きが生まれた様な気がした。
♦︎
その晩、ヒロタカさんから連絡が来た。
「まひるさん、イベントが近いんすけど、チケットがまだ200枚くらいしか出てないっす。何かいい方法はないですか?」
「まさか! "サカナ"も"ドリッパーズも出るのに?」
「マジっす、このままだとちょっとヤバいっすね……」
チラシも配り、サイトでも宣伝したのに……
「わかった! ちょっと考えてみるね!」
そう言ったもののどうすれば……。
俺は西田さんに相談してみる事にした。
プルルルル、プルルルル
「もしもし、西田さん? ちょっと相談があるんですけど……」
「どうしたの? やけに暗い声だね」
「来週のイベントの集客が上手く行ってなくて……」
そう言って、俺は状況を説明した。
「キャパを半数割ってるのはよくないね……今からならまず、手売りは出来ると思うけど50行けばいい方だろうね」
そうか、ツアーの時みたいに手売りで足す事も出来る。
「多分、宣伝やチケットの購入方法への導線が殆ど無いのが原因だと思う」
俺たちのバンドでは、サイトのアクセスもあまり無い。それでも売れたのは"サカナ"や"ドリッパーズがライブスケジュールに入れてくれているからだろう。
「とりあえず、うちは"サカナ"のサイトなどで呼びかけてみるから、"ドリッパーズ"に声かけてもらえるかな?」
俺は直ぐにナカノさんに連絡をすると、ナカノさんも追加で告知してくれる事になった。
人を呼ぶという事を甘く考え過ぎている。
俺はタキオにそう言われている様な気になった。
◯用語補足
・エリック・クラプトン
世界3大ギタリストの1人。きっとみなさんどこかで聞いたことがあるとおもいます!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!