俺の音楽ここにあります

ギタリストのTS転生ストーリー
竹野こきのこ
竹野こきのこ

ロックスターは自然体

公開日時: 2021年4月2日(金) 11:39
文字数:1,941

前夜祭前日、俺たちはいつものハイエースで、会場に向かう。


 今回も西田さんが付いてきてくれた。

「みんなはフェスは初めてかな? まぁ、出るのは初めてだろうけどね!」


「うちは初めてですわ!」

「あたしもー」

「あ、初めてです……」


「何度か……」


 サヤはお父さんに連れられて何度か来ているようだった。


「そうか、そしたらびっくりするかも知れないね」


 車は山道を抜けると、遠くにステージらしき物が見える。


 まだ、設営最中の様だが、ほとんど出来上がっていた。


「見てみて! めっちゃすごい!」

「わぁー! 広いねー!」


「あれが2ndのBステージだよ!」


 大きな山に3つのステージ。

 B、A、C、と順番に並んでいる様だ。


「うちらここ!? 広すぎひん?」

「Bステージは、約1万5千人のキャパだよ、Aステージは約2万、Cステージは5千人くらいだよ」


「ほぇ〜」

「僕たちには狭いステージだな!」


「あ、うん、そうだねサヤ……」


「あはは、サヤちゃん言うねぇ〜まぁ、そのくらいで構えている方がいい!」


 車を止め、受付を済ませると出演者パスを貰う。


「このパスが無いと入れなくなるから、みんな無くさない様にするんだよ」


「はーい! なんか西田さん引率の先生みたいやなぁ」


「西田さん、アーティストはまだ全然来てないみたいだけど……」

 

「結構時間はあるから、"サカナ"含め大体は明日の朝来るのが多いよ、君たちは初めてだから前日入りさせて貰ったけどね」


 なるほど、でも反応を見る限りその方がいいよな、昼過ぎからはチェック含め前入りアーティストのリハーサルが始まる様だ。


「すいませーん! "ハンパテ★"の皆さん、機材をご確認下さい!」


 先日レンタルした機材と、持参した機材をローディースタッフに伝え、セッティングなどを打ち合わせする。


 リハーサルで微調整をしていく流れだ。


「"ハンパテ★"さんは機材少ないですね!」


 俺たちは、出演バンドには珍しく俺以外は、大体機材は一つづつ、俺ですら"マスたん"と"キラの助"の2本しかない。


 サブは持っていた方が良さそうなんだけど……。


「うち、長谷先生にベース借りようと思ったけど、あかんていわれたんよなぁ」


「かな、それネタ? 5弦のフォデラ借りてどうするつもりだったの?」


「かっこええやん?」

 いまいち本気かわからないが、言ってみたのは本当みたいだった。


「フォデラ……」

「サヤ、見れないよ! 借りてないからね!」


 会場も広いけど、スタッフもすごい数だな。

 俺たちは早速手持ち無沙汰になり、挨拶しながら見て回る事にする。


 すると、かなはなにかを見つけた。

「あそこになんか外人さんおらへん? 有名なアーティストかも知れへんで!」


「本当だ! ちょっと挨拶に行こうか!」


 通訳の人らしき人と3人で話している外国人がいる。


 えっ……コールドプラン!?


「ジョニー・マ〜〜ティン! 」


 サヤが叫ぶと外国人はこちらを見た。


「僕らのライバルはお前たちだな! この……モゴモゴ」


 俺は急いでサヤの口を押さえて止める。

「すっ、すいません!」

「モゴモゴ……」


 コールドプランのギターボーカルのジョニー・マーティンだった。


 ジョニーは通訳の人に何か話しかけると、通訳の人が言う。


「君たちも出演者かい? 僕の事知ってるみたいだけど? だそうです」


「あ、はい。"ハンパテ★"といいます」

「その取り押さえられてる子はメンバーかい? 面白い子だね楽器はなんだい?! だそうです」


「あ、すいません。サヤはギターです……」


 ジョニーは表情を明るくすると、何か言っているが……プロフェッショナルと言ったのだけ聞き取れた。


 のべ10年くらいは洋楽聴いているはずなんだけどなぁ〜。そう思うと通訳の人が、

「若そうだけど君もプロのギタリストなんだろ? 前夜祭一緒にやらないか?って言ってます」


 マ……マジで?

「やります! やらせて下さい!」


 ジョニーに伝わると、

「君達もかい? いいだろう、一緒にやろう!」


 とジョニーは言ってくれた。

 サヤの謎のキャラ作りのおかげで、コールドプランと同じステージに……世界のトップクラスのアーティストだぞ!?


 その場を去ると、俺はサヤに言った。

「サヤ、コールドプランすきじゃなかった?」


「好き……どうしよう……」

「まさか勢いで言っちゃったの?」

 サヤはコクリと頷いて顔を赤くした。


「うちも好きやで……」

「あたしも……」


 マジか……。

 みんなミーハーじゃねーか!


 ステージに戻ると、スタッフが楽器をセッティングしてくれている様だった。


「もうすぐリハーサルだね……」

「ステージからの景色どんなんやろなぁ」


「そうだね……」


 俺は昔見たウッドストックの映像を思い出し、高揚した。



("ハンパテ★"の皆さんお願いします!)



 ステージに出ると、驚くほど広く、解放的な野外ステージに圧倒される。


 少し離れた所から手をふるジョニーが見えた。

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