目標はライバルになって、協力者になる。
この形が理想的で、効率が一番いいと思う。
先日出来た軽音部のバンドもそうやって、そのうち外で一緒に音楽を盛り上げていけたらいいと思う。
「ねぇねぇまひまひ? わたし達次の"ハンパテ★"のライブに行きたいんでっす」
由美ちゃんは恥ずかしそうにもじもじしながら言った。
「いいよー! 是非是非きてよ!」
「でも、もうチケットとれないんでっす……」
あ、そういえば……ヒロタカさん完売って言ったっけ?
「あー、でもヒロタカさんに言って無理ならわたしらも無理だよ?」
チラッ
「どうしたの?」
「"ハンパテ★"のゲスト枠って空いてないんでっすか?」
なるほど!
西田さん達はメンバーで入るし、ジュンさんとタクミさんは普通に買ってくれたから枠は3つまるまるあるかも……
「ゲスト3つ残ってるよ!」
「わたしらでいいでっすか?」
「うん、もちろん! 一応かな達にもきいとくね!」
今回のライブでフェスに出れるかが決まる。
チーズアンドクラッカーは全てのバンドが実力派で知名度も高い。
パンクロックでは知らない人は居ない程のギターヒーロー。あの、横山源さんも来るのか……あのフレーズ中学、高校時代練習したなぁ……。
さらに彼のレーベルは、大手を蹴ってまで所属している実力派のバンドも多数在籍している。懐かしいな……憧れだったバンドと同じステージに立てるのか。
俺はそんな事を考えながらそわそわして数日あまり寝れなかった。
♦︎
ライブ当日、雅人やヒロタカさんも緊張していたみたいだった。
「マジヤバイっす!」
「あれ? ヒロタカさんは何度か対バンしてるんじゃないんですか?」
「いやー、ジャマイカン6は初めてっすよ! 高校の時練習しまくってたバンドっすからねー」
あー、俺もしてる!
冷静に考えて、有名なフェスみたいなもんだよな。
「ねぇねぇ、まーちゃんそんなにすごいの?」
「ひなも聞いたことくらいはあるんじゃない?」
「源さんのバンドはあるけど……」
俺は高校の時、ジャマイカン6のライブを見に行った事がある。
切なく重いメロディと、雰囲気のある声。
さぞイケメンが出ると勝手にCDを聞いてテンションの上がっていた俺は最前列で構えていた。
SEが終わり、出てきたのが教祖様ルックスで終始ポカンとしたのはいい思い出だ。
ジャマイカン6のリハが始まる直前、ついに横山源さんが現れた。
ゆるい服装にでかい紙袋を両手に持ってニタニタしながら物販の机に紙袋を置いた。
えーっと、マック?
その瞬間、彼と目が合った。
「おー、来てる来てる!」
大御所とは思えない位、キョロキョロと周りをみながら俺たちの元に歩いて来る。
「どーも、横山源ですら! いやぁ可愛子ちゃんばっかりで緊張すっなー! 手汗拭いとかないと」
源さんはデニムで手をふきふきし握手しようと手を差し出した。
思っていたより大分小柄で、身長もかなより少し小さい様にも見える。
「意外と背たかいらねー!」
そう言ってしっかり握手した。
ヤバイマジかよ……俺は内心テンションが爆上がりする。
源さんはニヤリとして
「ハンパテ★ってハンバーガーパーティの略なんら? コレ持ってきたからパーティしよめぇ」
そう、紙袋のなかは全て独特紙の箱に入ったビッグマックが綺麗に詰まっている。
えっと……
「1人2個まで! ごめん、少ない? いやぁ腕は2本しかないらでさー」
緊張とジュンさんとはまた違った、ゆるく勢いのある感じに圧倒された。
「ええんですか! 源さんありがとうございます! 有名人やのにええ人やなー」
「よいしょしてもハンバーガーしかでないど?」
「ハンバーガーでてますやん!」
こういう時のかなの性格が少し羨ましい。
なんかよくわからないけとかなとめちゃめちゃ打ち解けていた。
俺はそっとかなの後ろにいる事にする。
「雅っちの元バンドらしいら?」
「そうなんです、同じ中学校で!」
「楽しみらねー!」
憧れていた伝説のギターヒーロー。だけど飾らない雰囲気の源さんと徐々にうち溶けていく。俺は身近に感じてしまう事で、少し不思議な気持ちになった。
「お? 次リハらよ?」
「へっ?」
「えっ?」
「えっと、逆リハじゃないんですか?」
「うん? そうらよ?」
「次、トリ前なんですけど……?」
本来メインのバンドが最後を飾るのが普通。特にゲスト的な位置としてはメインになるはずだった。
「うん、トリ前! 君ら 野心家らねー、流石にトリはちょっとわたせないかなぁー」
そうじゃなくて……えーっ!
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