嫌がらせか？ まさかな……。

　1弦なんて自然に切れる可能性もあるしな……疑うのは良くないな。

　俺は変えの弦を取り出しすぐに付ける。

「まーちゃんいけそう？」

「大丈夫、1本だけだしすぐだよ！」

　ステージに行き、セッティングをする。

「あー、なんでやろ？音がでぇへんねんな」

「本当に？ ちょっとみるよ？」

　エフェクターのボリュームが下がってるだけだな。

「かな、治ったよ！ エフェクターのボリュームが下がってただけみたい」

「ほんまに？ いじった覚え無いねんけどなぁ……」

　かなは眉をひそめ言う。

「まーちゃんの弦といい……」

　そう言言いかけたかなの口に俺は人差し指を立て止めた。

「かな、疑うのは良く無い。たとえそうだとしてもわたし達はいつものパフォーマンスをしよう！」

　異ジャンルや、勝てる自信がある時にトラブルがあると、ついマイナスの方向に考えてしまう。

　だけど……たとえそうだとしても、冷静に対処するのが一番いい。

　セッティングを終え俺たちは一度はける。

　今日の客層は7割はいつもと違う。

　ステージの暗闇に光るサイリウムが少し新鮮な気分にさせた。

　ギターを構えてステージに立つと色々な声が聞こえ、少しガヤついていた。

　暗闇で俺はギターをかき鳴らし、曲を始めるとガヤついたホールが静まった。

　照明が照らし少し暑い。

　なんだよ、ノリは違うけどみんな楽しんでくれている様で良かった。

　MCに入ると色々と声が届いた。

「ギター本当にひいてるのー？」

　誰かがそう言った。

「弾いてるよ？ 良かったらわたしの知ってる曲ならひくよー？」

「ベビメタ弾いてー！」

　ベビメタか、メンバー的にちょっと気になっていたから弾いた事はある。ちょっと単体でインパクトがある方がいいかな……

「OK！ そしたらTHE ONEのイントロを……」

「うぉーやべー！」

「まじかよ！」

　おぉっ！ すげー反応がいい！

　ついつい顔がにやけピースしてしまった。

　その後のオリジナルも、うまく掴めたのか大盛況で幕を閉じる。

　ライブの後写真ラッシュとグッズが飛ぶようにうれた……。

　グッズの売り上げは今日の方がいいな。

　ひなは囲まれてあたふたしている。

　ひな、人気が出てるな！

　そう思っていると、俺の前に20歳前後の男の子が……

「あ、僕はまひるさん推します！」

「押さないで！ 怪我する！」

「えっ！？」

「えっ？」

「そしたら僕、怪我したいです！」

「ん？？ 怪我しないで？」

「ビンタ頂いていいですか！？」

「わたしは何キャラだっ！」

　えーっと、なんか話が噛み合わないぞ？

　ひなはこんなの相手にしてるのか……頑張れひな……。

　すると、黒髪のミドルヘアのちょっとかわいい対バングループの子が話しかけてくる。

「今後のアイドルは楽器も弾けないとダメですね……今日はビックリしました」

　唯一、楽器を持つパフォーマンスをしてたグループの子なのだけど……そもそも俺らアイドルじゃないし！

「あのー、わたし達アイドルじゃなくて、ロックバンドなんだけど……」

「まぁ。衣装やグッズなんかはそういう構成ですけど、それはファンや見る側が決める事ですよ？」

　……なるほど。

「三人とも、ルックスはトップアイドルみたいなのが羨ましいです……」

　この子も充分かわいい方だと思うけどな……。

　インディーズアイドルといってもみんながみんなかわいいわけじゃない。比較的一般的にはかわいい子が多いのは事実だが、正直ちょっと無理のある子も見かける。

　人気を作る１つの足掛かりかも知れないと思った。

　♦︎

　帰り道、西田さんは言った。

「今日のまひるちゃんのギターリクエスト良かったね」

「まぁ、弾いてないと思っている方が多そうでしたので」

「前よりもステージのニーズを意識できるようになったんじゃないかな？」

　そういうと、少し笑って

「うちも恋愛禁止とかしてみる？」

　と言って笑う。

「あたしはあーゆうのは苦手です……」

　ひなはぐったりと返事した。

　かなは普段から人気だし、ひなは特需がある……俺は？ なんかあんまりルックスを活かせていないような。

　俺はホテルで鏡をみる。

　結構かわいいとおもうんだけどなぁ。

　今後の１つの課題にしようかな。

　レコ発ライブも後半に差し掛かり、俺たちは次のステージに向かった。