"マスたん"は俺が今まであんまり使おうとは思って来なかったギターだ。
この身体になってこれにしようと思った理由は今までとは違う音を出したいと考えていたんだろう。
俺は、身体が小さくなりなにもかもが変わった気がしていた。
そんな中、この小ぶりなギターは俺に新しい可能性を与えてくれた。
逆に、"キラの助"は元の俺の音に近い物を出せる。安定したブリッジ、金属の様に響く音この安定感と扱い易さがやっぱり俺には馴染んだ。
この左右対極なギターを使い、次のステップを踏み込んで行きたい。
今の自分から進化しなければならない……俺はギターを構え、鏡の前に立った。 言われてみれば他人目線で見たことなかったな……。
「この可愛さがビックリ人間枠にさせてるのか? それとも別に要因が……」
俺はジーンシモンズのポーズをとってみたり、タッピングしてみたりしてもお茶目さが可愛い。これ、結構大げさに振り切らないと音以外では凄い感出ないんじゃないか?
これはちょっとメンバーで交互に確認しながらやるべきだな!そのあと俺は、動画で色々な女性アーティストのパフォーマンスを見てみる事にした。
ははーん。
俺は色々と悟った。
♦︎
次の日の朝、俺は二人に宣言する。
「わたしらは"凄かわ系"で行こう!」
「凄く可愛い系? まーちゃん言うやん!」
「ちがう、凄く"て"可愛い系!」
「なんでまたそんな事を言い出したの?」
「昨日カッコいい女性バンドの動画を見ていたんだけど……カッコいい女性バンドはもうちょっと大人にならないと無理!」
「まぁなぁ、カーディガンズやエヴァネッセンスなんかも大分大人感あるしなぁ……」
「そう、でもロックなポーズとかして可愛くなるのは武器だなぁって思って……」
「まーちゃん、そんな自分が何しても可愛いみたいな発言は痛いで……」
「いやっ! 自分が思うとかじゃなくて客観的にだよ?」
「客観的に可愛いと思われとると……かぁーモテる女はちがうわぁ〜」
ここまでいじられるとは……。
だが、言いたい事は伝わっているみたいだった。
「でも、具体的にはどうやっていくんや?」
「お互いに指摘しあうのはどうかな? わたし達が似合うと思う"凄かわ"をね!」
「あーっ! わかった! 二人に対して似合うと思う"凄かわ"を指摘し合う感じね!」
「そうそう! ファッションや動き、立ち振る舞いなんかをお互い評価してちゃんと反省が出来るようにしよう!」
「じゃあとりあえず。わたしはクラッシュ叩く時の、ひなの口が"3"みたいになるのが気になる!」
少しボーっとしていたひなが目を見開くと、
「えっ? あたし? うそっ、なってる?」
「それは可愛いポイントちゃう?」
「もっと早く言ってよー!」
「それいうならまーちゃん制服の時しょっちゅうパンツ見えてるけどな!」
「えっ? 本当に?」
「階段とか何も抑えず2段飛ばしするやろ? あの時ほぼ見えてるで!」
「本当に?」
全然気にしたことがなかったけど……そうだったのか……。
こういう風に、やればいいと思う事がすんなり出来るメンバーはいいと思う。バンドを作る際、ある程度のスキルがあればテクニックより優先するべき内容だと俺は思う。
♦︎
こうして俺は中間テストの勉強をしながら、合宿までに7つの新曲を仕上げる事が出来た。
ひなもかなも3曲づつ、出来上がりが気になるところだが、とりあえず計13曲を合宿中に詰める事になる。
合宿先は山梨県の富士山の近くと聞いているけど、どんな感じのところなんだろう?
温泉とかあるのかな? スタジオが近くにあるのかな?
まだ行った事の無い場所に少しワクワクしている。そして、GWの前日、合宿の為の荷物をつめると、その日は眠りについた。
そして次の日、ついに俺たちの合宿が始まると、合宿先は想像と少し違ったものだった。
◯用語補足
・エヴァネッセンス
メタル系の女性ボーカルで1番有名なのでは?
とかってに思ってます。
・カーディガンズ
サマソニにも来たことがありますね!
オシャレ感抜群のバンドですが、ハードロックのブラックザバスのカバーしていたりします。
・ジーンシモンズ
KISSのべースの人。デカイ気はしてたけど、イメージより超デカイ!多分これ以上はいらないと思う。
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