俺の音楽ここにあります

ギタリストのTS転生ストーリー
竹野こきのこ
竹野こきのこ

憧れのアーティスト

公開日時: 2021年3月31日(水) 11:33
文字数:1,158

次の日、サヤは何も言わずに帰った。

 俺は少し、ちゃんとまた来てくれるのか心配になった。


(これでよかったんだよな……)


 フェスが近づくにつれ、サマーフェスティバルのサイトでは次々と詳細が揃ってくる。


 そして残り1カ月、最後のバンドが発表されていた。



 ♦︎



 授業中、俺はかなの視線を感じ、目を向ける。何か言ってるみたいだがよくわからない。


 かなを見て首を傾げると、スマホがバイブした。


 "サマーフェス、最後のアーティストみて!"


 メッセージの後にリンクがついている。

 最後? そう言えば今日だったな……。


 俺はリンクを開くとそこには"サカナ"と出ていた。


 えっ!?

 時子さん達出て来るのか!!


 そりゃメジャーバンド、出てきてもおかしくはないか……。


 休み時間になると、かなは駆け寄ってくる。

「みた?」

「サカナ(マッドウィンプス)でるよね!」


「えっ? (えー!)」

「両方やで! 最後の3バンドはサカナ、マッド、と……コールドなんとか……」


「ちょっともう一度見てみる!」

 "サカナ"にテンションが上がって他を意識していなかった。


 "コールドプラン"


 UKロックの大御所じゃねーか……。

 ちょっとまて、このクラスが出るなら他にも結構でるんじゃないのか?


 やっぱり、海外の大御所がいくつか出ているが……う、嘘だろ?

 俺は初めて、出演者リストをみて鳥肌が立つ。


「ほんまえげつないアーティストいっぱいやなー。 あれ? まーちゃんどうしたんや?」


「……」


「ねぇ、まーちゃん?」


「……あ、アンダーグランドがでてくる……」


「誰それ?」

「だれー?」


「キルコーだよ、キルコー・エンリケ! トップギタリストの一人だよ!」


「すごいの?」


「今までは出てくるフェスじゃなかった」


 俺はふと思い出した。

 体感では3年前、アンダーグランドが来日コンサートをしていた。


 丁度夏くらいだっただろうか……あの時、俺たちのライブと被り行けなかった事を嘆いたんだ。そしてすぐ後にフェスにも出るのを知ってなんでサマーフェスティバルなんだよと……。


 俺的にはそれくらいサマーフェスティバルは日本の商用フェスのイメージだった。


 あの日俺たちが出ていたのか……。

 同じフェスに出れる事が出来るなんて……。


「なんかまーちゃん嬉しそうやなぁ」

「すごいメタルのギタリストみたいだしね」


 キルコーにギターを見てもらえる? のかな?



 ♦︎



 ライブが近づき、俺はキルコー効果でギターの練習に熱が入っていた。


 部活で歌を、家ではギターを、少しでもいい音を出せるように練習。


 今日は機材のレンタルのチェックの日。

 俺はギターを抱えて外に出るとギターを背負い、アンプベッドを持っている派手な女の子が目に入った。


 金髪のショートヘア。

 背は俺より少し高いくらいか?


 それにしても浮いているというか、オーラがあるな……。


 女の子は振り向くと俺に言った。


「僕のギターが必要でしょ?」

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