次の日、サヤは何も言わずに帰った。
俺は少し、ちゃんとまた来てくれるのか心配になった。
(これでよかったんだよな……)
フェスが近づくにつれ、サマーフェスティバルのサイトでは次々と詳細が揃ってくる。
そして残り1カ月、最後のバンドが発表されていた。
♦︎
授業中、俺はかなの視線を感じ、目を向ける。何か言ってるみたいだがよくわからない。
かなを見て首を傾げると、スマホがバイブした。
"サマーフェス、最後のアーティストみて!"
メッセージの後にリンクがついている。
最後? そう言えば今日だったな……。
俺はリンクを開くとそこには"サカナ"と出ていた。
えっ!?
時子さん達出て来るのか!!
そりゃメジャーバンド、出てきてもおかしくはないか……。
休み時間になると、かなは駆け寄ってくる。
「みた?」
「サカナ(マッドウィンプス)でるよね!」
「えっ? (えー!)」
「両方やで! 最後の3バンドはサカナ、マッド、と……コールドなんとか……」
「ちょっともう一度見てみる!」
"サカナ"にテンションが上がって他を意識していなかった。
"コールドプラン"
UKロックの大御所じゃねーか……。
ちょっとまて、このクラスが出るなら他にも結構でるんじゃないのか?
やっぱり、海外の大御所がいくつか出ているが……う、嘘だろ?
俺は初めて、出演者リストをみて鳥肌が立つ。
「ほんまえげつないアーティストいっぱいやなー。 あれ? まーちゃんどうしたんや?」
「……」
「ねぇ、まーちゃん?」
「……あ、アンダーグランドがでてくる……」
「誰それ?」
「だれー?」
「キルコーだよ、キルコー・エンリケ! トップギタリストの一人だよ!」
「すごいの?」
「今までは出てくるフェスじゃなかった」
俺はふと思い出した。
体感では3年前、アンダーグランドが来日コンサートをしていた。
丁度夏くらいだっただろうか……あの時、俺たちのライブと被り行けなかった事を嘆いたんだ。そしてすぐ後にフェスにも出るのを知ってなんでサマーフェスティバルなんだよと……。
俺的にはそれくらいサマーフェスティバルは日本の商用フェスのイメージだった。
あの日俺たちが出ていたのか……。
同じフェスに出れる事が出来るなんて……。
「なんかまーちゃん嬉しそうやなぁ」
「すごいメタルのギタリストみたいだしね」
キルコーにギターを見てもらえる? のかな?
♦︎
ライブが近づき、俺はキルコー効果でギターの練習に熱が入っていた。
部活で歌を、家ではギターを、少しでもいい音を出せるように練習。
今日は機材のレンタルのチェックの日。
俺はギターを抱えて外に出るとギターを背負い、アンプベッドを持っている派手な女の子が目に入った。
金髪のショートヘア。
背は俺より少し高いくらいか?
それにしても浮いているというか、オーラがあるな……。
女の子は振り向くと俺に言った。
「僕のギターが必要でしょ?」
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