春休みに入ると、俺は2つの課題を掲げた。
1つはDTMを取り入れたスタイルの確立。
もう一つは、フェスに出るきっかけを作るイベントをさがす。
この日、1つ目を完成させるべく、あるところに来ていた。今の世界で一番DTMに精通してるであろう人物、リクソンさんだ。
ひながDTMを取り入れた日の晩、俺はひなに話し、リクソンさんに連絡をすると、2日間リクソンさんのスタジオで見てくれる事になった。
「よぉ、久しぶり! お前らも結構アーティスト感でてきたんじゃないか?」
「今日はよろしくお願いしますー!」
ひながいつになく積極的に話す。
「さっそくだけど、使ってるDAWは?」
「プロツールスです!」
そういうと、ひなはパソコンと、接続するの機械を取り出す。
「おー、PCもインターフェイスもいいの買ってんじゃん!」
「楽器屋さんで充分と言われたのにしました!」
DTMをする為には、接続する為の機材が必要になる。リクソンさん曰くひなはかなりいい機材だったようだ。
リクソンさんはひなの音源を聴くなり言う。
「機材はいいから後は調整だな……鍵盤でやってんだろ?」
それからひなに音の調整や細かなエフェクトの効果など状況に合わせた使い方をそれからみっちり教えてくれる。
暇すぎた俺とかなが雑談をはじめると、リクソンさんは言った。
「おい! まひる暇なんだろ?サンプリングとるから弾け! ギター持ってきてんだろ?」
「あ、はい!」
それから俺は一音一音弾いたり、部分的なバッキングをさせられたり……さ、作業だ。
「というかお前らいい機材買ってんじゃん! さては結構入ったな?」
「えへへ……」
「最初のレコーディング代払ってくれてもいいんだぞ?」
「あー! すっかり忘れてました……」
「あはは、嘘だよ、西田さんから充分貰ってるからいーよ」
正直忘れていたわけじゃない、インディーズのレコーディング頼めばOKと思っていたわけだけど……。
こうして夕方になり、ひなへのレクチャーが終わった。
「こいつ、エレクトーンやってただけあって筋がいいよ! "ハンパテ★"辞めたくなったらエンジニアする?」
「あははは!」
「まぁ、パッチ作業のアシスタントからだけどな!」
こうして2日間のレクチャーを終え、ひなのDTMは更に進化した。リクソンさんは「また話そうぜ!まぁまひるのサンプリングも取れたし俺も有難い!」
さりげなくリクソンさんも欲しかったんじゃないのか?と思いつつ、サンプリングで2日間も教えてくれたのは本当にありがたいことだった。
♦︎
そして、2つ目の課題、フェスへのアプローチだ。
俺は、ヒロタカさんと話しを進める。
「まひるさーん、なんか色々声かけてます?」
「かけてるけど、どうしたんです?」
「うちのレーベルのイベント、9STEPのタクミさんも見にくる事になっちゃったんですけどー!」
「本当に? ジュンさんかなー?」
「ただでさえ、源さんくるのに……」
「えー、源さんくるの?」
「当たり前じゃないっすかー! うちのプチイベントですよ?」
そりゃそうか……その2人に見てもらうのは俺も流石に緊張するな……。
「あー、あと俺の妹が同じ高校みたいなんでよろしくっす!」
「ヒロタカさん、妹いたの?」
「ですです! 軽音入るんすよね? 妹から聞きました!」
「もしかして、ポニーテールの子?」
「あー、ポニーテールにしてる事多いっすね! 気づきました?」
「いやいや、全然似てないじゃん!」
「あー、あいつすっぴん俺っすよ?」
たしかに、メイクはバッチリだった様な……
「まひるさんのファンなんで、色々教えてあげて下さいっす」
どこかで会った気がしたのはそのせいか!
"スターリン"のライブから見てたのも納得した。
まさか由美ちゃんがヒロタカさんの妹だったとは……。
♦︎
春休みも中盤に差し掛かり、俺たちは後半の2本のブッキングをこなすためスタジオで練習をする、練習を終えると何処かで見た事のある人に声をかけられた。
「"ハンパテ★"でしょ? ちょっとスタジオに入ってくれない?」
その人物は……
◯用語補足
・DAW
DTM用のソフト
・インターフェイス
DTM用の接続機器
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