イベントまで残り1週間。
場所を変え、手売りをしているが、このペースで行けても前売りで300枚を少し超えるくらいだろうか。
"サカナ"や"ドリッパーズ"の告知での取り置きはまだ連絡が来ていない。
不安を残しながら今日は"ドリッパーズ"の個人スタジオに行く事になっている。お昼を過ぎるとナカノさんが迎えに来てくれた。
「まひるさん、わるいね。ジュンも何か考えが有っての事だと思うから……後、ヒロタカ拾っていくわ……」
「ヒロタカさんも参加するんですか?」
「まぁ、アイツは歌だけどな!」
確かにスリップノットをするなら、スクリームはいいとしてメロディは"ドリッパーズ"の声だと軽い……しっかりとした声のヒロタカさんの方がいいだろう。
ジュンさんそこまで考えてたのかな?
スタジオに着くとボクサーパンツ一丁のジュンさんが居た。
「ヤッホー! きたきた、どう? ギターはなれた?」
「その前に何か履いてください……」
「えー? なんで? そんな恥ずかしいモノは付いて無いと思うけど?」
お・ま・え基準かよ!
俺もなんで恥ずかしがってるんだろ? まぁ最近男の裸の方が見る機会ないからなぁ。
「あ、まひるちゃん ? ジュンならいつでも殴っていいよ」
「ちょっとタカちゃんそれはないんじゃないのぉ?」
その瞬間タカさんはジュンさんの背中をステックでしばいた。
「痛っ! これ絶対赤くなるやつ! 」
どうやら手綱を持っていたのはタカさんの方みたいだ。
「それじゃ一丁やりますかっ!」
そう言ってフレディの被り物を被ると、ジュンさんは本気でヤバイ人にしか見えない……
「ハイッ!ハイッ! ワンツー」
そんな明るいスリップノットねーよ!
だけど……上手いな……。
って、ちょっ! 変な所でアレンジいれるな!
ここは合わすのが美味しいとこだろ!
だけど……練習なのに終始テンションが高いのと骨折してるはずなのに動き回る感じがなんかめちゃくちゃ楽しそうだな……。
「うん、ギターめっちゃ綺麗! 遊べる遊べる!」
遊ぶな! ちょっとまともに弾いてくれ!
「ちょっとーヒロタカもまひるちゃんも硬いんじゃないのぉ?」
ってなんでギター弾かずに動画撮ってんだよ!
……結局前半まともに1回も弾いてない……
「あ、後半流石にツインペダルつかうわ。流石に続くと足がつる……」
って使ってなかったんかい!
というか、いつもあれでシングルなのか?
「ねぇ、まひちゃんクッソ上手いけど、たのしんでる?」
「楽しんでますよ……」
「もっと頭振っちゃいなよ! ちょっと髪短いか……」
もしかして、後半もこの調子なのか……
ふと目をやるとヒロタカさんが下を向き座っている。
「ヒロタカさん、どうしたんですか?」
「いや、2人ともギター上手すぎっす……」
「スリップノットならヒロタカさんも全然弾けると思うけど……?」
俺はキラーを渡した。
「ドロップB、意外と弾けなくは無いっすね……」
「でしょ?」
「おー? ヒロタカちゃん弾いちゃう? いいねー! まひちゃん歌いなよっ!」
どんなスリップノットだよっ!
「おっ! いいねー! 意外と歌詞覚えてるーうんうん! よしっ! 俺脱ぐわ!」
そう言うとジュンさんはボクサーパンツも脱いだ。
「おいおい、今日もかよ!」
ん? 今日も? そのエクスプローラー!
あーっ!
「……」
その後、キラーを返してもらいみんなで暴れ回り練習は終わった。
意外にも最後の方はジュンさんもまともに弾いていた。
ジュンさんは服を着るとなぜか泣きそうな目で「キラーを貸して!」と言った。
俺はキラーを渡すとジュンさんは泣き出した。
!?
「キラーちゃん……そんなにまひちゃんが好きなのかい? よーし、君は性転換だ! キラの助としてまひちゃんの婿にいけー」
えっ?
「えぇー!」
「というわけで、キラの助をよろしくたのんだ!」
「でもこれ、20万近くしますよね?」
「だって婿入りしたいって言うんだもん、仕方ないじゃん……」
この人どこまでマジなんだろう?
「まひちゃんにはいい相棒になると思うよ? いまムスタングでしょ? ジャンルとか、これじゃなきゃとか思わないでさ……好きにつかいなよ!」
「でも……」
「大丈夫! キラの助では全裸になって無いから! だって今までオカマだったし!」
いやいやそれだと性転換してないじゃん!
設定無茶苦茶だな!
「あーっ! 足痛ってー!」
そう言うと、ジュンさんはナットなどのパーツをくれた。
♦︎
家に帰ると"キラの助"を出した。
「これじゃなきゃと思わない……か……」
白くツヤのある"キラの助"が今日から宜しく! とハイテンションで言っている気がした。
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