今魔法少女になっていただけると、なんとあの大人気ゲームをプレゼント! しかもおまけとしてMGポイントが――

待って逃げないで怪しい者じゃないから
ケイ
ケイ

MGポイントをプレゼント!

公開日時: 2021年12月1日(水) 21:43
文字数:1,287

「今魔法少女になっていただければ、なんとMGポイントをプレゼント! そして――」

「ちょっと待って」


 僕の話の最中に、クロが割り込んできた。


 現在僕たちはいつものようにお酒を飲みながら、とある題材について話し合っていた。

 その題材とは『僕の明日のプレゼン』である。


 営業部で『どうしたら魔法少女が増えるか』という内容のプレゼンをすることになったので、そのプレゼン資料を作っていた。そして、内容をクロに確認してもらっていたところなのだ。


「MGポイントって何?」

MagicマジックGirlガールポイントさ」

「マジックガールポイント? 何それ」

「あれ……知らないの? ちょっと前から導入された制度だよ。もう魔法少女にはポイントカードが配られたって聞いたけど……」

「……私まだもらってへんよ……」


 おお……業界内の情報伝達すらできていない組織らしい。もう魔法少女業界は末期だな。


「MGポイントっていうのはね、ポイントを貯めると、いろいろな景品と交換できるポイントのことさ。それを貯めているカードは、MGカードって呼ばれてる」

「ふーん……景品って何がもらえんの?」

「ゲームとか……ディナー券とか……」

「ほう……お酒は?」

「お酒はないよ。だって魔法少女用なんだから」


 大抵の場合、お酒が飲める年齢になる前に彼女たちは死んでしまうのだ。生き残ったとしても、魔法少女としての活躍は見込めない。なぜなら魔力が尽きているから。 

 後輩の指導や営業の成績などで、この業界に残ることはできるが、それによってMGポイントが貯まることはない。


 MGポイントは主に戦闘によって貯まる。怪人を倒せばもらえるポイントである。


「つまり、今魔法少女になったら、それだけでポイントが貰えるわけやね」

「そうそう。お得感あるでしょ?」

「詐欺感ある」

「何を言っても、それはあるよ」


 そもそも『魔法少女になってください』というのが嘘っぽいのだ。どうやっても詐欺っぽさを脱臭することはできない。


「まぁ僕たちの意見は基本的に却下される前提だからね」

「そうなん?」

「そうそう。プレゼンには割とお偉いさんも参加するんだよ。だから、その人達の案が通るんだ。いつものことだよ。僕たちは数合わせ」


 だから、正直それっぽい文面を仕立て上げておけばいい。それだけで仕事をしたという評価になるのだから、悪くない時間である。


 ちなみに、一応僕はこの手のプレゼン資料は全力で作っている。手抜きをすると気持ちが悪いし、もしかしたら僕のアイデアで魔法少女業界を救えるかも、なんて思ってしまうのだ。

 だから、もしかしたら明日、この業界は変わるかもしれない。魔法少女が賑わっていた過去の栄光を取り戻すかもしれない。


 ……いや……やっぱりそれはないだろうな。明日僕の案は却下されて、家に帰ってクロとお酒を飲むのだ。

 そこで愚痴を言って、麻雀やってゲームやって、それなりの人生を過ごしていくのだろう。


 まぁ、そんな人生も悪くないか。クロとお酒を飲んでいる時間はなんだかんだ言って楽しい。だから、僕の人生は悪くない。

 

 楽しみがあるっていいよなぁ……なんてことを思いつつ、僕たちはいつもの日常を過ごしていくのだった。

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