脳みそっていうのは大人まで成長したら後は衰退していくしかない……今まではそう思われてきました。
しかぁし! じつはぁ! 脳みそは成長するんですう! ――っていう話を最近の脳科学的な視点からしようと思います。
巷でよく聞く『有酸素運動』とはいったいなんなの? 運動するとなんで脳にいいの? 具体的に脳のどのへんがよくなるの? などそれっぽいことを書けたらいいなと思います。
人間のみならず、生物には神経が集積した回路が存在します。そう、脳です。
この脳というものはすごくよくできていまして、まるでインターネットの世界を凝縮したかのような仕組みができあがっています。すべての情報を統括して生物に様々な効果を与えてくれるすばらしい機能をもっています。しかしそれは逆に言うと、脳の衰えが生物にダイレクトに影響されるということです。
前提的な知識として語ることがあります。まず脳とは『電気信号の塊』だと考えてください。脳には神経細胞があり、それらに電気が通って情報をやりとりしています。しかし細胞同士はくっついておらず、微妙に隙間が空いているのです。おそらく、テレビなどでみなさん聞いたことがあるかと思いますが、その隙間を埋めて情報伝達するのは『神経細胞(ニューロン)』の『シナプス』という部位です。
まあ、脳細胞は『木』みたいなもので、そこから枝があちこちに伸びている形だと思ってください。そしてシナプスはそこに成っている『葉』です。まあぶっちゃけ形としては『キノコ』っぽいんですけどそのヘンはあまり考えすぎないで、とりあえず本体である木から伸びている枝があり、葉っぱと他の木の葉っぱの間に物質が通っているというイメージをもっていただければ幸いです。
これらは成長するに従って数を増やし、3歳ごろに急激に増えます。脳の成長は20歳前半ごろまで進むのですが、細胞の数自体はそれ以降数は増えづらくなります。しかしここからが脳の本気。木に例えたことを思い出してください。脳にある木はその後の生活によって成長を続け、枝の数や葉っぱの数、大きさを伸ばしていきます。これを『可塑性』と呼びます。
健康的な生活、脳に対する刺激的な生活をすればこの能力は伸びていくのですが、多くの人はそのような習慣を持っていないまま脳みそのすばらしい働きを活かせない生活をしています。ではいったいどうすればよいのでしょうか?
_人人人人人人人人人人人_
> 運 動 で す ! ! <
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運動をすると脳にどんな働きをしてくれるのか?
みなさん気になるところだと思います。まず、よく聞く『有酸素運動』についての説明をしましょうか。大雑把な言い方で良いのであれば『そんなキツくないトレーニング』を指します。しかし勘違いしないでください? これは『筋トレレベルで息止めて踏ん張るようなキツイトレーニングに比べたら』の話で、例えばランニング、水泳、サイクリング、縄跳びといった運動が挙げられます。そもそも有酸素運動は英語で『エアロビクス』ですから、それなりに激しい運動だと思っていただいても構いません。
イメージが掴みにくいですか? でしたら、例えば『最大心拍数』というものがあります。計算方法は多種多様ですが、もっともシンプルなのは『分速(220ー年齢)回』でしょうか。ただこれに関しては個人差があり、平常時の心拍数や細かい指標などが存在するので、必ず自分で確かめるようにしてください。学生なんかがこの文章を見てるのでしたら体育や保険の先生にちゃんと聞いてね?
この最大心拍数の70%ほどの運動をするとややキツめの運動をしていると言えます。成人した人であれば220ー20で200。その7割ということは140。つまり1分間に140回心臓が動けばわりと激しい運動をしているということになります。自分のペースで走ってみて、終了したら脈拍を図ってみてください。たとえば6秒で10回脈動しているのなら10を掛けて分速100回。あなたが20歳ならばまだ楽なペースで走っていることになります。逆に、周囲から「手を抜いている」とバカにされていても、あなたの脈拍が最大心拍数の8割にでも満たしていればそれは正しく激しい運動をしていることになります。脳を鍛える運動ではこの有酸素運動と最大心拍数がカギとなります。
では、運動をするとどのような働きがあるのかをご紹介しましょう。前提として、脳細胞には『可塑性』があることを思い出してください。これまでの話からなんとなく、「運動すると可塑性がどうにかなるのかな?」と予測を立てた人がいるかも知れませんがそのとおりです。
ドーパミン、アドレナリン、セロトニンなどの名前を聞いたことがあると思います。これらは運動すると産まれる物質で、運動は数多くの『神経伝達物質』を作り出してくれます。その中でも個人的に注目して欲しいのは『脳由来神経栄養因子(BDNF)』というある因子の総称で、神経細胞の回路を構築、維持をしてくれる物質で、これらは特に『海馬』――記憶に深く関係する部位にて大量に生産されます。
これがなにを意味するか、聡い方はもうわかったかと思います。BDNFというのはすなわち脳のインフラ整備、施設管理をしてくれるとても頼りになる存在です。しかも増築までしてくれる存在が海馬にたくさん集まってくれるのですから、海馬を中心とした脳のあらゆる部位に栄養を送り、成長を促し、さらにはあたらしい神経細胞まで生み出してくれる(新生)という、まさに『脳の肥料』と言っても過言ではありませんね。
運動をするとそれらの物質が生産され、脈動による血流で脳を巡回し、BDNFが脳の肥料となってあたらしい細胞を生み出してくれる。それだけで運動がどれほど重要なものなのかが分かると思います。運動とはまさに、人間の体と脳を共に成長させる効率的な方法なのですよ。
必要な運動量。あたらしい脳の活かし方。
さて、運動の効果を延々と説明しましたが、せっかく活性化した脳を生かさない手はないですよね? ということで、ここではどのくらい運動をすればいいのか、いい感じになった脳をどう活かせばいいかを書いてみようと思います。
注意:ここに記述するのは私がこれまで読書で得た知識をおおまかに見つめ直して、このくらいで良いだろうと個人的に判断したものです。とはいえ本に書かれた中でもわりとしっかりやってる感じに仕上げたと思うので参考にしてみてください。
毎日何時間もジムに行ってる時間なんてない! そんな方でも大丈夫です。ほんの30分ほど、最大心拍数の7割ほどの運動を週7、不可能であればせめて週5回は行ってください。この条件をクリアしているのであれば、よほど隔った運動(ひたすら腕立て伏せなど)でなければなんでもいいです。筋トレを含めたいというのなら全身を使う運動が理想的でしょう。ランニング、テニス、水泳、物音を立てても良い環境であればバーピージャンプなんかもいいですね。
これだけで達成感を感じられ、疲労感は体から抜けていくことでしょう。矛盾しているかもしれませんが、運動することで疲労が抜けていくのです。この運動をすれば、まず不健康な生活とはおさらばできるでしょうね。
さて、問題なのはこの後です。せっかく脳神経をいいかんじに作ったのですから、こんどはそいつらにちゃんと働いてもらわないとですよね?
上記の運動をしっかり行った後15~20分ほど時間を置きましょう。ちょうどシャワーを浴びて麦茶でも嗜んでる時間ですね。脳に血流が巡ってなんの情報も入ってない『空』の神経細胞が生まれたその瞬間がチャンスです。
_人人人人人人人人人人人_
> 勉 強 で す ! ! <
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自分の知りたい知識。やるべき作業。なんでもいいです。この時間帯は集中力・勉強効率などすべてが効率的になります。脳にぶちこみたい知識がある時、必要な作業がある時、重要な会議がある時などなど、あなたが思うタイミングで運動することをおすすめします。ああ、会議直前の運動であれば、たとえば昼休みに15分間外を出歩くだけでも効果があるので試してみてください。今までにないあたらしい発想があるとおもいますよ?
人間、せっかく脳みそという強い武器を手に入れたんですから使わない手はないですよね? しかも、運動するだけで脳のパワーが最大限に発揮できるってわかったのですから運動しない手はないですよね?
さあ、騙されたと思ってやってみてください! 多くの研究データが運動の素晴らしさを物語っています。あなたの今後の人生のために、健康的な老後のために、まだ見ぬ知識を自分のものにするために、さあ! 運動だ!!
わたしは有酸素運動というよりは軽い筋トレを1日2回してます。しかしそれまでの人生にてためこんだ遺産がちょっとばかし潤沢にありますので、とりあえず長い時間を掛けてやっていきたいと思います。
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