つれづれグサッ

つれづれなるままに、日くらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、なにやってんだろおれってなる。
犬物語
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色の心理学 ―赤の『情熱』

公開日時: 2020年10月17日(土) 18:00
文字数:3,092

本日は色彩心理について書いていこうと思います。赤を見つめるだけで人は興奮するって言われたら信じますか?

 色というのは世界に彩りをもたらしてくれる面白い概念です。本日はそんな不思議な『色』という世界に踏み込み、人が色に対してどのような心の変化を生み出していくのかを語っていきましょう。参考に心理カウンセラー、芸術療法講師をしていらっしゃる『山脇恵子』氏著作『色彩心理のすべてがわかる本』を用いらせていただいた上で独自の知識による見解も交えています。


いちおう視覚的な話をここでしてしまいますと、人間の目はことこまかい機能が備わっています。眼球を動かす筋肉により見たい方向に目を動かし、『瞳孔』で光量を調節し『水晶体』で焦点を合わせ、眼球内の『硝子体』をぬけた先に到達する『網膜』の『錐体細胞・桿体細胞』によってそれぞれ光の色彩情報、濃淡情報を取り入れています。そこで受けた刺激を視神経が脳へと伝えてゆくのですが、これはざっと流す程度にしましょう。詳しく話すとひとつの章になってしまいます。簡潔にまとめますと、人間の目は『電磁波の波長、強さを識別し脳みそに送っている』ということです。光とはつまり電磁波ですから。とはいえ人間が認識できる電磁波の範囲はものすごく狭いのですが――これもまあ、興味があれば個人的に調べてみてください。人間の感覚器官と脳みそってわりと細かくできてるんだなと理解できるはずです。


 まあ、今回は色彩心理ということで、眼球に対する解説はこのレベルにとどめておきます。



人間が色から受ける影響


 イギリス、ダーラム大学のある研究チームが色彩心理についての研究を行いました。これはイギリスの権威ある科学誌『ネイチャー』にも掲載された非常に興味深い内容です。


 2004年のアテネオリンピックにおける(ボクシング・テコンドー・レスリング2種)において、赤色のユニフォームを着用した選手らが青色のユニフォームを着用した選手よりも勝率が高いことがわかりました。その傾向は同レベルの選手同士でさえ20%もの差がでる程です。このことから、統計学的に青より赤が勝負事に対して何らかの影響を与えている可能性が示唆されました。一節によると脳内物質の『テストステロン』による影響が考えられます。いわゆる男性ホルモンとされるテストステロンは、筋骨格、男性器の成長などに関わり、胎児の脳に大量に浴びせられると攻撃性などが高まる可能性も示唆されている。


 同大学が行った鳥に関する長期的な実験でも、色鮮やかな鳥のほうが繁殖行動などに有利な動きが見つかり、色はもしかすると『本能的な影響』を与えるかもしれないという推測にたどり着くことができる。


 赤と青に関する問題はこれだけではない。イギリスの心理学者『ニコラス・ハンフリー』の実験では、赤い部屋と青い部屋を用意しサルに生活させてみると、サルは常に青い部屋に好んで過ごしていることがわかった。これは人間も同じことだ。赤い光のもとで人間は血圧が上昇し脈拍までも上がる影響が見られる。攻撃的や神経質な傾向が現れ、逆に青い部屋ではリラックス――平静な状態になるという報告があるのだ。ただ人間の場合は『社会性・多様性』があり、地域の伝統など環境的な影響から決してその限りではないということも忘れないでほしい。


 しかし、人間は感覚器官のうち8割以上を視覚情報に頼っている『メラビアンの法則』。色彩から得られる情報はバカにできなくて、とくに原色である赤の影響は大きいと思う。その後の生活は保証しないが、試しに壁一面、天井のすみずみまで赤に塗ってひと月ほど生活してみるとわかりやすいと思う。おそらく神経が敏感になり休める時間が圧倒的に少なくなるはずだ。そもそも人間の目は『赤・緑・青』の色を判別する神経があり、赤を感じる神経が圧倒的に多く、緑はその半分ほど、青はさらにその3分の1ほどしかない。それは人間が進化の過程で得られたものだという説があり、初めは果物が熟した時の『赤』や、自らがケガを負った時の血の『赤』に対する興奮がそうさせるのではないかということだ。果物は誰かに取られる前に食べたいし、血が出る状況は速く逃れなければならない。どちらもより動き、より神経を研ぎ澄ませる必要がある。そして生命に関わる活動なので最も必要な情報だ。とはいえ、原始的には植物の『緑』を識別する必要があり、見上げた時に空の『青』と区別する必要があっただけに、色を感知するようになった順番は『緑→青→赤』の順番だったと考えられる。生物により識別数は異なり、たとえば犬やネコであれば『赤・青』、鳥や昆虫などは『赤・緑・青・透明(赤外線)』と見分けられるようです。私達が見える世界=他の動物たちが見ている世界というわけではないのですね。



色にまつわるイメージ


 みなさんは『赤』に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか? 熱い、激しい、明るい、動きがある――多くの方がこのようなイメージをもつかと思います。おそらく冷たいとか静かなというイメージを持つ人はすくないでしょう。色彩心理のなかでも赤は有色系のなかでもエネルギーを象徴する重要な色とされています。多くの人種の歴史においても重要視され、おそらく『火』の発見から呪術的な要素も追加されたのではないでしょうか?


 多くの民族からエネルギーの象徴とされるこの色は愛情、興奮、怒りなど『ポジティブ・ネガティブ方向に関わらずエネルギー』なのです。火、血、太陽などにより赤は『生命に直結する影響』を感じさせるためですね。とくに血の色が赤だった影響は大きいかと思われます。出産時の出血は生命の誕生を思わせ、ケガにより流れた血は死を意識させる。本能にも根付いたそれは赤を見るだけで心理的な興奮作用を生み出し、無意識に血圧や脈拍などを増加させるにまでなっているのです。そりゃあ信仰の対象にもなるわな。


 赤が生命の象徴であるならば、赤からパワーを貰える! ――そう昔の人間が考えてしまうこともムリはないでしょう。古代ローマの指導者が赤い服を着用したのは悪魔から身を守るためとされ、戦に勝利を収めた戦士は身体に赤色を塗ったそうです。新生なる場所への入り口である鳥居も赤が多く、厄除けとして赤色を用いる文化も多い。そもそも日本じゃ最高神が太陽を司る『天照大御神』ですからね。日本もなにかと赤に対して縁起を覚える種族です。身近な赤、探してみませんか?




 この通り、赤は強い感情を演出できる色でもありますので、ここ一発で気合を入れたい! という際は赤色のなにかを身につけるとよいでしょう。興奮しておいたほうが良い状況において赤に装備品を着用する。覚えておこうと良いでしょう。常に装備しているとストレスになるかもですが……。


 怒りなどのフラストレーションを表現するために、例えばお絵かきなどはいかがでしょうか? 赤色で画用紙全面に絵の具をぶちまけて「これがわたしの怒りだ!!」的な心象をぶつけてみると意外とスッキリするものです。ドバァー! っと塗りたくって己の情熱を吐露しちゃえ! 心理学的にも自分の感情を表現して何かにぶつけることはものすごくストレス解消になりますから、赤色という情熱に乗せればより効果的になると思います。その後、この興奮した気持ちを鎮めたいという場合は、ちょっとムリヤリですがその赤の上に黒で塗りつぶすようにしてみましょう。黒はなにもかもを吸収し、包み込み消し去ってくれるたのもしいヤツです。あなたのモヤモヤをブラックホールが連れ去ってくれますよ?


 大事な戦いに勝利するために、そして凝り固まったストレスを吐き出すために、ぜひいちど『赤』を用いて心の赴くままにはっちゃけちゃってみてください!

いつのまにか赤特集になってしまった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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