もっともな戦隊はごもっともな変態!?

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第7話(4)出動の結果

公開日時: 2025年3月21日(金) 22:36
文字数:1,900

「こんにちは……」

「ああ、亜久野さん、ありがとうございます」

 放課後、生徒会室を訪れた美蘭に、正高が声をかける。

「?」

「あの動画ですよ、お陰様で大好評です」

「ああ……」

 正高の説明に美蘭は納得して頷く。

「本当にありがとうございます」

「広報として当然の務めを果たしたまでです。それに……」

「それに?」

「皆様の協力があってこそです」

 美蘭は既に生徒会室に顔を揃えていた面々を指し示す。

「いやあ~」

「それほどでも~」

「あるけどよ~」

 速人、雄大、強平が照れくさそうにそれぞれの後頭部をかく。

「……三馬鹿は放っておいて」

「お、おい!」

「ちょ、ちょっと!」

「誰が三馬鹿だ、眼鏡!」

 強平たちが正高の言葉に揃ってムッとする。

「問い合わせもすごいんだ、『あの子は誰?』みたいな……」

 愛一郎がスマホの画面を見ながら話す。

「ふむ、それならば……」

 美蘭は腕を組む。愛一郎が問う。

「それならば?」

「第二弾の動画は顔出しもアリかも……」

「い、いや、さすがにそれは無理だよ」

 美蘭の言葉に愛一郎は苦笑しながら首を左右に振る。

「冗談よ……」

「ははっ……」

(ちっ、そこまでは引っかからないか……)

 美蘭は内心で舌打ちをする。そこにブザーが鳴り響く。

「来やがったか! 行くぞ、お前ら!」

「「「「「『セイバーチェンジ』!」」」」」

 五人は変身して、生徒会室を飛び出していく。

「ぐわあああっ!」

 戦闘員たちが軒並み倒される。

「どうだ! 参ったか! 悪の組織め! お前ら悪の組織の野望は俺たち、『最上戦隊ベストセイバーズ』が打ち砕く! この世界をお前たちの好きにはさせねえぞ! 平和は俺たちが必ず守ってみせる!」

 レッドセイバーの言葉に合わせ、五人がポーズを決める。

「ちっ……」

「戦闘員どもは撤退しろ」

「クモ怪人さま!」

「足手まといだ……」

「コウモリ怪人さま!」

「巻き添えになっても知らんぞ」

「ハチ怪人さま!」

「手加減は出来んからな」

「カマキリ怪人さま!」

「相手が相手だからな……」

「サソリ怪人さま!」

「いいから早くしろ!」

「は、はっ!」

 クモ怪人に怒鳴られ、戦闘員たちはそそくさと撤退する。

「あ、あいつら……!」

「どうやら復活したようだね……」

 グリーンセイバーがいち早く反応し、ピンクセイバーが呟く。

「復活って……なんだか厄介そうだな~」

 イエローセイバーが自らの後頭部を抑える。

「しつこい奴らだぜ! おらあ!」

 レッドセイバーが強力な攻撃を立て続けに放つ。

「があ!」

「ぎあ!」

「ぐあ!」

「げあ!」

「ごあ!」

 怪人たちは豪快に吹っ飛んでいく。ブルーセイバーが冷静に呟く。

「再生怪人の類は弱いと相場が決まっているものです……」

「……ほう、これは俺たちが相手する価値があるようだな……」

 ローブを身に纏った四つの影がその場にパッと姿を現す。イエローセイバーが驚く。

「な、なんだ⁉ いつの間に⁉」

「新手か! 今度は自分が!」

 グリーンセイバーが素早く飛びかかる。

「ふん……!」

「がっ……!」

 ローブから虎の顔を現した者の拳がグリーンセイバーのみぞおちに入り、グリーンセイバーはその場に崩れ落ちる。虎の顔の者が呟く。

「スピード差は予測で補えるぜ……」

「グ、グリーンセイバー! はっ⁉」

「あら、失礼、ピンクは好きな色だから、つい……」

 ローブから鳥の顔を現した者のくちばしが、ピンクセイバーの左肩を鋭く突き刺す。ピンクセイバーはその場にうずくまる。鳥の顔の者が周囲を見回して呟く。

「さて、お次は誰にしようかしら……」

「く、くるなら来い!」

 イエローセイバーが身構える。

「むん!」

「がはっ……!」

 ローブから亀の顔を現した者の体当たりが、イエローセイバーを襲う。イエローセイバーは後ろに倒れ込む。亀の顔の者が苦笑気味に呟く。

「なんだ、その図体は見かけ倒しか……」

「み、皆さん! ……はっ⁉」

「せい!」

 ローブから竜の頭の顔を現した者の爪による攻撃を食らい、ブルーセイバーは倒れる。

「て、てめえら! うおおっ!」

「‼」

 レッドセイバーが四人に反撃し、四人を後退させる。

「逃げるな! ぐっ……⁉」

 もう一つの影がレッドセイバーの隙を突く。レッドセイバーは膝をつく。もう一つの影はローブを被ったまま、四つの影に告げる。

「今日はあくまでも様子見だ、手負いの獣こそ恐ろしい。引き上げるぞ」

「ああ……」

 もう一つの影は振り返り、戦いの場に駆け付けた美蘭の姿を認め、声をかける。

「侵入任務ご苦労、ミスコンプリート。貴様の動画が役に立った」

「……! ま、まさか、あなたたちが出てくるとは……」

 美蘭は顔を強張らせる。五つの影はその場から姿を消す。そこには倒れ込んだベストセイバーズ五人だけが残っていた。ベストセイバーズ、初めての敗北であった。

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