偉大なる同志書記長の転生先はシベリア?!

彼らは己のため、国のため、正義のために闘い続ける
BIG・MASYU
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第9.5戦 シベリアをぶらりぶらり

公開日時: 2020年9月19日(土) 15:32
文字数:1,832

スターリンの初めての生放送から3日後のこと


 今私は気晴らしと街の観察を兼ねて、軍服姿でプラウダの家から少し離れた歩道を闊歩している。

 歩道は落ち葉の量が少し気になるもよく整備されており、更に近所の家はどれもシベリアの普通の労働者の家とは思えない。

次に、視線を上に向けると、私が生きていた頃はモスクワといった大都市でしか見られないような高層ビルが確認できる。続いて、私は歩きながら、ちらっと喫茶店や百貨店の中の客の様子を盗み見た。店内では、友人や家族と談笑している者と一人でじっくりと品定めをしている者の二グループに別れていたが、険しい顔をしている者は誰一人としていない。最後に歩行者に目を向けると、学校帰りの学生達から杖をついている老人と多種多様だ。

 とにかく、以上のことからこの街は大変活気があるということが分かるのだが、


 私にはこの状況が全く理解できない! なぜなら、私が知っているシベリアとは似ても似つかないからだ!

私の記憶を辿れば、たしかシベリアというのは冬になればマイナス40度をゆうに越す極寒地で、数十万人ものの労働者が文字通り骨身を削って労働に従事している場所だ。

 私も若い頃に「シベリア送り」を体験しているし、最高指導者になってからは百万単位で祖国と党の裏切り者を家族ごと「シベリア送り」にしているため、あの地の待遇と状況は深く理解している。

 それ故、私の死後から60年経ったとはいえ、シベリアがここまで発展しているのが腑に落ちないのだ。

 …もしかすると、シベリアの強制収容所での思想教育が遂に実を結んだのだろうか?それであれば、先程から道歩く人達の多くが耳に付けているあのコードは恐らく思想教育の一環だろう。

 まぁ、だとしても、だ。これはおかしい。


 ん?待て。そういえば、たしかプラウダはここがシベリアの何州とは言ってなかったな。何しろ一概にシベリアと言っても、恐ろしく広大なので地域によってはシベリアでも発展している所があったはずだ、、、恐らく。

 とにかく、まずはそのことを調べるべきか。


 私はそう思い、今自分がいる場所について調べようとした。

 だが、その時あることに気がついた。


 はっ!しまった!今の私は偉大なる同志グーグル先生が組み込まれている、パソコンを持っていないではないか!

 これは困ったな。一体、どうしようか……


 待て、私は何を言ってるんだ! つい数日前まではインターネットなど無い世界で生活していたではないか!

 ふんっ、こんな問題グーグル先生がいなくとも独力で解決できる。


 私はすぐさま辺りを見回し、話しかけやすそうな人間を目で捜索した。すると、丁度私の前方に人柄の良さそうな老婦人を見つけたので、心なしか早歩きで追いかけた。

 老婦人に追いつくと、私は慎重に話しかけた。

「もしもし、少しいいですかな?そこの綺麗な老婦人」

「ん?何か困りごとでしょうか?」

 私の呼びかけに老婦人は振り返りながら、笑顔で応えてくれた。

「私はここに来たばかりでここのことをよく知らないんですが、どうかここの州の名前を教えていただきたいんです」

 私がゆっくりと自分の願いを伝え終わると、老婦人は微笑みを崩さずに言葉を返してくれた。

「あら、そんなことでしたら。幾らでもお答えしますわ。それで、ここはノヴォシビルスク州という場所ですよ」

「ほうほう、なるほど…」

 私は深く頷いた。すると、老婦人は私の様子を不思議に思ったのか、心配そうに話しかけてきた。

「どうかされましたか?」

「あぁ、お気になさらず。それはともかく、その心遣いに私は深い感謝を伝えたい」

 私は軽く礼をした。

「そうでしたか。いえいえ、お気になさらず。それでは、良い1日を」

 そして、老婦人は私から見て右方向に歩いていった。

 なるほど、、、ノヴォシビルスク州か。それならばこの発展ぶりにも納得がいく!

 確か、ノヴォシビルスク州といえば、私が最高指導者に就く以前からシベリアの中でも特に発展していたな。

 ならば、ノヴォシビルスク州で政治家として名乗りをあげても、かなりの効果が期待できそうだ。恐らく、最初からモスクワで政治活動を行うよりもこういった所の方が効果的だと思うからな。そうとなれば、まずはユーチューブを利用してインターネットというコミニュティで、著名人になるのを当面の目標としよう。

 よし、では早く帰宅してプラウダと会議を開かなければ!



 と、私は思い、くるりと後ろを向いた。

 その時、ふとある考えが頭に思い浮かび上がった。

「そういえばここは一体どこだ?」




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