処女作
人生というのは非常に面白いものだ。
様々な人間に出会い、様々な出来事が起こる、まさに奇想天外だ。ところが、人生の全てが幸福に包まれているわけではない事は読者も良くご存知だろう。私も自分一人では超えられそうにない困難な壁にぶつかったことは過去に何度かある。
例えば、今は亡きレーニンと共に行った十月革命、反革分子の粛清、第二次世界大戦、そして資本主義国家との対立……思い出すたびに頭が痛くなる。だが、今の状況に比べればそんな事は茶番にも等しい。何故ならつい数秒前まで自分の寝室にいた男が突然気を失い、
気づいたら暗闇の大地で突っ立ているからな。
一体全体どういう事だ、説明がつかない!クーデターでも起こされたのか?いや、用心深い私に限ってそんな事が起きるわけが無い。だとしても、意味が分からない。
真夜中であるため何処にいるかもわからないし、頭痛がするから足取りが覚束ない。だから、こうやって思考を頭の中で張り巡らせることが出来るのもあと少しだと予測できる。だからこそ、この状況はとてもまずい。
「う、うぅ」
くそっ、思わず喘ぎ声がでてしまった。普段から情けない態度は表に出さないようにしているが今は仕方がない。
とにかく、体を休めることができるような場所に向かわねば……
ん?! ま、まずい思考力が鈍ってきた!足が全く言う事を聞かない!
こ、こんなところで倒れたら殺されるのは確実……
「だ、誰かた、助けてく、れ」
藁にもすがる思いでそう言いながら、私の両の眼はゆっくりと閉じていった。
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