日付けを跨いではいますが、前話が数時間前に更新されています、ご注意を。
「今日の授業はここまで」
先生がそう声を掛けると同時に生徒達が一斉に立ち上がって動き出した。
「今日のランチはどうする?アリス」
「食堂に行ってみない?日替わりメニューが気になるの」
ここの大食堂はとても大きいが採光を大きく取り入れた作りでとても明るくて気持ちが良い。
大食堂と聞いて前世でいうところのホ○ワーツを思い浮かべてしまっていた私は良い意味で期待を裏切られた。
ホグワー○より某ランドのクリスタルパレスレストランの豪華版に近い感じ?
メニューにおいても軽いジャンクちっくなものから高級感溢れるものまで各種取り揃えてあり、季節のおススメや日替わりのおススメランチ(ただし個数限定、毎食売り切りなのだ。)まであることに私は感動した。
なので最近の朝はまず本日の日替わりチェックから始まることが多い。
「色気より食い気ね、まぁ良いけど」
軽く息を吐いて連れ立って食堂に向かい、無事二人分の日替わりランチをゲットして良さげな席を探して周囲を見回すと、
「メイデン嬢、バーネット嬢、こちら空いてますよ」
「お二人ともご一緒しませんこと?」
同時に違う方向から声が掛かる。
先鋒(?)が同級の男子生徒のグループ、次鋒が一、二年生を取り交ぜた(?)ご令嬢のグループだ。
「俺たちが先に声を掛けたんだ!」
「私の方がやや早かったですわ」
「お前らは一昨日もお二人と一緒に座ってただろうがっ!」
「だからなんですの?」
ここに編入してきて二週間、今やこの事象も恒例になりつつある。
それというのも___、
喧嘩になりそうなところに、涼やかな声が割って入る。
「賑やかだね」
__コイツのせいである。
「王子殿下っ!」
「エリアス様っ?!」
編入初日のお昼休みに王子が、
「良ければお昼を一緒にどうかな?」
とロイヤルスマイルを浮かべて誘いに来たのだ。
「どうしてエリアス様がわざわざ編入生に?」
「あの二人、まだ妖精の友達すらいないんでしょ?」
ヒソヒソやり出したお喋り雀に、王子がにこやかに宣う。
「彼女達は昨日編入してくるなり魔法の実技において一級認定されたんだ、こんなことは我がアカデミー始まって以来のことだからね」
「し、初日で一級?!」
「そう、しかも妖精の補助なしでね。間違いなく魔法の天才と言える。気にするのは当然だろう?」
ごく、と唾を飲み込んでお喋り雀が黙り、周囲が嘘のようににこやかに接してくるようになった。
そんな経緯ではあったが、アリスティアもジュリアもあからさまに敵対行動さえ仕掛けられなければその辺りを気にしないタイプなので、思いのほかアカデミーに慣れるのは早く、あっという間に「お昼を一緒に」と声掛けしてくる相手に事欠かなくなった。
ジュリアとしてはアリスと二人で構わないのだが__、
「……ジュリアと二人で良いのに」
小さく呟いたアリスティアのひと言にジュリアの口元が緩んだ。
「君達はほんとに仲が良いね。取ってる授業も全て一緒なのだろう?」
「ええ。たまたま興味の湧いた科目が一緒でして」
ジュリアが笑みを作って如才なく答えると、
「まるでバーネット嬢はメイデン嬢の保護者のようだね」
王子も如才なく返すが、アリスティアは「どっかで見たような光景だなぁ」としか思わない__単純に王子に興味がないからだ。
これはレジェンディアで“攻略対象”だった王子達の主義思考にいまいち共感出来なかったことが要因としてあるのだが、アリスティアはその辺り含めあまり気にしていなかった。
“乙女ゲーム”の範疇から外れれば、自分程度の身分ではそもそも妃候補などにあがらないと決めてかかっているからだ。
その観点から言って、「将来はギルドに登録して色んな世界を回りたい」との目標を掲げている身としては「妖精の補助が得られれば使える魔法の種類やレベルが上がる」というこの国は留学先として理想的と言えた。
因みに妖精との関わりについてもレベルのようなものがあって、
妖精と友達……何の契約も約束もなしに助けてくれるが、気紛れなので必ず助けてくれるとは限らない。話し相手や噂集めには役立つので多いのに越したことはない。
妖精の祝福……文字通り祝福を授けて助けてくれる妖精。妖精は人好きなので気に入られれば割と簡単にしてくれるが、嫌われたらあっさり離れてもいく。
妖精の加護(愛し子)……授かれば一生安泰レベル、レア中のレア。現在加護を得てるのはフェアリアの王族くらいで、加護を授けるほどの高位妖精になるとあまり人の前に姿を現さない。
のだそうだ。
聞けば聞くほどゲームちっくだが、魔法のある世界なのだから当然といえば当然か。
因みに私達はまだ妖精の友達はいない。
なんでも他国から来た人間を妖精が隣人だと見なすには一定の期間が必要なので、王子曰く「この国で暮らしていればそのうち姿を現わす」らしい。
結局この日は、
「王子殿下がいらっしゃるならご遠慮します」
と両組引き下がってしまったので、エリアス王子とその側近を兼ねた同級生(二人は二年生なのだが?)との四人で、一等陽当たりの良い角席……もとい、“見世物席”でのランチとなった。
「……王子なんだから専用サロンとかで食べなさいよ」
「……みーとぅー……」
放課後帰り際のジュリアの愚痴に、アリスティアもぐったりとして返した。
多分きっとまた明日。
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