反逆正義(リベリオン・ジャスティス)

Phase One——Ten days in heaven(or in hell)
九十九零
九十九零

リボルト#04 謎だらけの現実 Part2 行動開始!

公開日時: 2021年4月20日(火) 18:31
文字数:2,674

 俺に名前を呼ばれた聡は、少し悪巧みを考えているような表情を顔に浮かべながら、床に置いてある自分のカバンを漁っている。

「なによ、『アレ』って?」

 何の前触れもなく始まった展開に、友美佳は不思議に思い、目を見開いて聡の方へ体を乗り出す。

「ジャンジャンジャーン! 聡特製、万能監視ビデオカメラだぜ! プロペラ付きだから、どこまでも飛んでいけるし、高倍率スコープで余すところなく全部お見せしちゃうからな! それにさ……」

 機械オタクの聡は、昨日の無愛想な態度が一転し、自信作を手にして自慢を始めた。やはり誰でも自分の趣味の分野になると、テンションが高まるってわけか。


「それに?」

「なんと、こいつは透視機能も付いてるんだぜ! たとえ隙間のない金庫でも、中身が隅々まで見えるようにできるぞ!」

 美穂の何気ない一言で、聡のおしゃべりスイッチが起動された。しかし、聡のその言葉は、女子たちの白目を招いてしまったのだ。

「と、透視……それってもしかして……」

「聡くんはずっとアレで、私たちを覗いてたり……」

「あ、あり得るわね! 聡くんやらしい~」

「全てを見透かす異界の魔眼まがんか……なんて恐ろしい代物しろものだわ」

 女子たちは一斉に腕で体を隠し、さげすんだ目付きで聡をにらむ。やれやれ、こいつはとんだ災難だぜ。

 もちろん、聡はそんなことで黙るはずはなかった。彼は机を叩いた後、すぐに立ち上がって反発した。


「な、何だよ! 人を悪者扱いして! そもそも、オレはこんな汚え考え方をしたことはねーし!」

「えっ!?」

 驚く女子たち。まあ、こいつ普段あんまり喋らないタイプだし、多分普段はむっつりスケベとでも思われているのだろうか。

「なるほど、こんな使い方があったのか……今度これで女子たちを覗くとするか。これはお前らがオレに提案してくれたお礼だからな!」

 指に力を入れてビデオカメラを掴む聡は、急に頭を下げた。その口元から嫌らしい笑みが見える。それは女子たちにバカにされた怒りによって本気で言ってるのか、それともただの悪ふざけなのか。

「いやああああああーーー!!!」

 自ら災いを引き起こした女子たちは、合唱しているかのように同時に悲鳴を上げた。ワーオ、こいつは壮観だな。こういうノリ、嫌いじゃねえぜ。

 それでも千恵子は、冷静さを失うことなく、依然としてリーダーシップを発揮している。


「はい皆さん、お静かに! 今はふざけている場合じゃありませんよ!」

「そうだな。さっさと証拠集めに行こうぜ、技師エンジニアくん」

「おっと、取り乱しちまったな……よし、行こうか!」

 我に返った聡は手が滑ってしまい、危うく大事なビデオカメラを落とすところだった。

「おいおい、しっかりしてくれよ? 俺たちの切り札が壊れちまったら、作戦が水の泡ゲーム・オーバーだぜ」

「わ、分かってるよ!」

 俺は苛立つ聡の前で、ドアを開けて廊下に出た。他のクラスメイトたちも、俺たちの後に続く。

「さ~て、作戦を始めるか!」

 気を取り直した聡は、魂を燃やして元気溌剌の声を出した。握る左拳は、岩石の意志を表した証だ。

「ああ。まずはAクラスを調査するぞ」


 静かな廊下には、ただ俺たちの姿が揺れている。普通の学校ならどこにもありそうな光景だが、こいつはワケが違う。スパイのように動く俺たちは、この廊下ではあまりにも不自然だ。

 そしてついに、2ーAのプレートが俺たちの目の前に姿を現した。ドアには、大きな「P」が書かれている。その威圧感は、廊下の静けさと相まって更に強まる。

「よーし、行くぞ……準備はいいか?」

 姿がバレないように、聡はしゃがんだ体勢を取りながら小声で話しているが、興奮しているため震える音が隠せなかったようだ。

「俺たちなら、いつでもいいぜ。そっちこそ、もったいぶらないで、さっさとやれよ」

 武者震いしながら機械を弄る聡を見て、痺れを切らした俺は思わず彼を促した。


「そう焦んなって! ……よし、できたぞ」

 ビデオカメラを起動させた聡は立ち上がり、両手に黒い箱のようなものを持っている。よく見ると、それはラジコンの送信機だった。

 そしてビデオカメラの上部にある銀色のプロペラは、誇り高く回転し始めた。それが本体を引き上げて、少しずつ上昇していく。

「おお、すごいね聡くん! こんなものが作れるなんて~」

「フン、まあな! こう見えても機械には結構自信があるんだぜ」

 女子に褒められるのは初めてか、聡は少し照れくさそうに調子のいいことを言い放った。


「氷室さん、なかなかいい素質そしつがおありですね……わたくし、ずっと彼のことを誤解していたみたいですね」

「ただのゲーム中毒者とでも思っていたのか? まあ、そう思う気持ちは分からなくもないけど、もっと色んな角度で人を見るべきだったな、千恵子は」

 千恵子の自責じせきに、俺の言葉が繋がる。

「えっ?」

「実は昨日の夜に、俺はあいつと相談をしたんだ。何か隣の教室の、中の様子を見る方法はないかってな。そしたらあいつは別人に変わったみたいで、自分で作った自信作を一つずつ見せてくれたんだ」

「そ、そうだったんですか?」

 不思議に思う千恵子。ずっと話が噛み合わない二人に、こんな日が訪れるとは思ってもいなかったんだろうな。

「ああ、あいつと最初に出会った時、機械に詳しそうだなと思ったからな。でも、まさかここまでやる気が出るとはな」

 俺は冷静に自分の分析を述べた。しかしこの後千恵子の発した言葉は、俺の予想外だった。

「いいえ、わたくしが驚くのはそちらではありません。狛幸さんが、ここまで考えてくださったことです」

「えっ、そっち? 別に驚くことじゃねえだろう」

 今度は俺が驚く番だった。目を見開いた俺は、思わず千恵子の方を振り向いた。


「いいえ、そんなことはありません。わたくしの考えは、まだまだ甘かったようです。それに狛幸さん、いつもわたくしの先にこんな素晴らしい作戦を……何だか悔しい気分です」

 そう言った千恵子は、急に頭を下げ、また物憂い顔になった。やはり昔からの生い立ちは、彼女の完璧主義を作り上げたのか。

「他人と比べるのはやめようぜ、千恵子。君は君だろう? そうやって自分を責めるとキリがないぞ。それに、君も君にしかないいところがあるはずだ」

「こ、狛幸さん……」

 また俺に励まされた千恵子は、顔が赤くなり、驚きと喜びの満ちた眼差しで俺を見つめる。褒められて悪い気がする人はいないだろうな、やはり。


「あっ、映ったぞ! おーい、見てみろよこれ!」

 突然大声を上げた聡。どうやら何か衝撃的なものでも見たみてえだな。俺たちは素早く聡のいるところに近付き、一刻も早く教室の中を覗こうとする。

 そして俺たちは自分が目にした光景に、思わず絶句ぜっくした。

【雑談タイム】


友美佳「えっ、ここまで? なによもう~、いつもちょうどいいところに!」

秀和「しょうがねえだろう、作者だって色々都合があるんだよ。こうして更新するだけで精一杯なんだぜ」

菜摘「まあ、ファンのみんなを待たせるわけにもいかないもんね!

   とはいっても、大事なところは適当に書いちゃダメだし~」

秀和「そういうことだ。たまには待つことも大事だぜ」

友美佳「あんたたち、呑気なことを言うわね……」

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