「………また、失敗か…」
男は崩壊していく世界を、ただ見ている。
(これで何回目だい?)
頭に直接声が響く。
「…さあな。俺にとっては一回目さ。」
(私は君をズ〜っと待っているんだがねぇ…)
「いつか、そのときは来る。それまで待て。」
(はいはい。ま、期待しないで待っているよ。)
男はそれに応えず立ち上がる。
………世界が崩壊していく。光に、呑まれていく。
男はそれを見て悔しさに拳を握りしめることはない。男には両腕がないからだ。
…光が増していく。男はそれに飲み込まれながら、呟いた。
「教えてくれ、ーーーーーよ。俺はどこで間違えた?」
そして男は光に呑まれ………
ムキムキ!! ムキムキ!! ムキッ!!
目覚まし時計を止め、寝ながら腹筋していた体を止める。
「ふむ、朝か。」
そして俺は腹筋を続ける。別に異常ではない。この世界ではそれが普通なのだから。
「待ちに待った今日という日がやってきた!」
そう、今日は、
「旅に出るぞー!」
旅立ちの日だ!
「荷物確認!プロテインよし!プロテインよし!プロテイン………よし!」
準備万た…忘れていた。
「オッケー上腕二頭筋?今日の調子は?」
(へっ、右腕左腕ともにバッチリだぜ!)
「大胸筋は?」
[昨日から〜下の腹筋が〜、鍛えてもらった!!、ってうるさいんだけど〜。ねえ早く腕立て伏せもしてよ〜]
「ははっ、順番だよ。」
そう言うと大胸筋が不満げにピクピクと動く。可愛い奴め。
「腹筋もだめじゃないか。」
『いや、ちっ、違うんですよ!僕がやめておけっていうのに上の段が勝手に……』
【おいおい、三段目お前だって股関節周りの筋肉にアピールしてたじゃねーか】
〈そうですね、自分たちだけは違う……などという態度……二段目として見過ごせません!!
何より!私の周りにはかわいい子がいないんです!許せません!〉
「はいはいみんな落ち着いて」
口を開けば喧嘩ばかりの筋肉たち。
だがそれでもなお、愛おしい。
「ほら、今日は少し遠出するぞ。準備はいいか?」
(もっちろんだぜ!!)
[まあ、ついていってあげるわ。]
【〈『いつまでもあなたの腹に…』〉】
まっ、返事なんて決まっているか。
「じゃあ行くぞ。マッスルコンパス!!」
その瞬間、人差し指の第二関節から、ビキィィ!という鳴ってはいけない音が響いた。
「あれ?おかしいな…」
人差し指は何故か真下を指している。
「もう一度…マッスルコンパス!」
今度は正常に作動した。
「目的地は……あっちか。」
そして俺はうさぎ跳びを始めた。
「行こう!!!」
([【〈『おう!』〉】])
このときの俺は知らなかった。
この旅が、やがて世界を巻き込むことを……
初めて投稿します。竹杉快大といいます。
「たけすぎかいた」と読みます。
これから読む人が少しづつ増えてくれると嬉しいです。
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