神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
波 七海
波 七海

3-30 城塞へ

公開日時: 2020年10月25日(日) 09:00
文字数:2,037

 道にあふれるアンデッドを葬り去りながら、七人は進んでいた。

 今、城塞に向っているのは、デボラ、レヴィン、ダライアス、ダダックと神殿勢力のライル、シャルロット、アンヌである。


 城塞に近づくにつれ、大きな音が木霊するようになってきた。

 誰かが戦っているのだろう。


 アンデッドを倒しながら城塞の大手門に辿り着く。

 そこには、冒険者同士が戦う光景が繰り広げられていた。

 戦うと言うか、フェリクスのパーティが一方的に攻撃にさらされているようだ。

 彼等は崩れた壁の瓦礫に身を隠していた。

 攻撃をしかけているのは、エミール達、六人のメンバーである。

 近づくと、表情から既にこと切れているのが解る。

 助からないなら、倒すしかない。


 こちらはデボラを筆頭に対アンデッドの猛者が揃っている。


「ルーンブレード」


神光輝撃シャイニング


神霊烈閃アストラル・ティアー


火炎球ファイヤーボール


 一斉に攻撃を放つ一行。

 波状攻撃に堪らず滅びて行くエミールの仲間達。

 エミール自身もデボラに一撃で両断され黒い塵となり、虚空へと消えた。

 ダライアスも新米剣技で、元冒険者の首を一刀の下、はね飛ばしていた。


「いったいどうなってるのさ?」


 デボラがフェリクスに尋ねると、慌てて状況を説明し始めた。


「俺達にもよく解んねぇんだ。黒いローブを着た魔導士風の男が何かしたかと思うと、エミール達がアンデッドにされちまった」


「そいつはどこへ消えた?」


 ダダックの問いかけに、レヴィンがチーズはどこへ消えた?みたいに言われてもと心の中で突っ込んでいると、オットマーが答える。


「解らん……あんたらが来る直前にどこか消えちまったよ」


「オットマー、とりあえず、その三人の鑑定をしておくれ」


 デボラの指示にライル達を鑑定していくオットマー。

 デボラは大手門を開いて中に入れるよう衛兵に話しかけている。

 最初は渋っていた衛兵だったが、相手がデボラだと解ると慌てて門を開けて中へと招き入れた。


 彼女に近づいて来る衛兵隊長に将軍への面会を求めると、そのまま足早にどこかへ向かっているようだった。


「さっさと留守居役のバルリエ将軍に会って、鑑定を始めてもらわないとね」


 今、この街の領主は王都インビックにいるため、この街を取りまとめているのは将軍である、バルリエと代官のマヌヴォーであった。

 先行していた衛兵隊長が戻ってくる。どうやら話を通してきたようだ。

 デボラはその歩みを止める事はない。将軍達がいる場所も解っているのかも知れない。

 やがて扉が開け放たれている部屋へ到着すると、何も言わずに中に入るデボラ。

 続けてレヴィン達も一礼して入室する。


「おお、デボラ殿、無事だったようだな」


 そう言ったのは、まだ若い顔に余裕の微笑みを浮かべ、悠然と構えている銀髪の男だった。


「無事なもんかい。バルリエ将軍。多くの仲間が死んじまったよ」


「外の状況はどうなっておるのだ?」


 代官を務めるマヌヴォーは、事態を把握しようとデボラに尋ねている。


「アンデッドであふれかえっているよ。Sランクの魔物も複数いるみたいだ。神殿は落ちたよ。あんたらが閉じこもっているうちにね」


 その言葉に少しばかり厳しい顔になるマヌヴォー。

 それに構わず、デボラはマイペースに話し続ける


「レヴィン。説明を頼む」


 急に振られて一瞬戸惑ったレヴィンであったが、すぐに説明を始める。

 話すのはもちろん死霊術士ネクロマンサーのことについてだろう。


「この街にアンデッドを操る事のできる。アンデッド使いがいるか、もしくはアンデッドを引き寄せるアイテムがある可能性があります。城塞の全員に鑑定による職業クラスの確認をお願いします。マジックアイテムの類があればそれもお願いします」


「はぁ!? そのような職業クラスなど聞いた事がないぞ?」


 マヌヴォーが素っ頓狂な声を上げる。


「レヴィンと言ったか……。それは確かなのか?」


 そう聞くのはバルリエ将軍だ。


「証拠はありませんが、確信はあります」


「何の証拠もなく全員を調べろだと!? 戯言も大概にしろッ!」


「戯言ではありません。マヌヴォー卿。ここまで何の手がかりも見つからなかったのです。調べる価値はあるはずですが?」


 デボラのフォローにマヌヴォーは怯む。


「ええい、すぐに鑑定士を呼べッ!」


「私も鑑定士です。鑑定を行うので、順番に漏れのないように手配してください」


 オットマーも鑑定に加わるようだ。


 その時、外から大きな音が聞こえてきた。

 壁が崩れるような音だ。


 慌てて、部屋からバルコニーに出ると、大手門の様子を確認する。

 そこには体長2、30mはあろうかという、腐ったドラゴンのようなものが蠢いていた。


「今度はドラゴンゾンビか……」


 デボラから、ため息が漏れる。


「鑑定は何が起こっても続けさせておくれ。戦える者は外に出るよッ! このままじゃ城塞が破壊されちまう」


 デボラ、レヴィン、ダライアス、フェリクス、オレール、ライル、シャルロットが外に向かう。


「俺は遠慮しておく……正直ついていけない……」


 ダダックは離脱するようだ。


「飛竜隊を全騎出せッ! 上空から援護させろ」


 後ろでは、バルリエ将軍が大声で指示を飛ばしていた。

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