現れたちんちくりんな少女を見ると、まるで、『ちょいーん』と効果音付で登場したかのような感覚にとらわれる。
その少女はいわゆる、メイド服というものに身を包んでおり、背は低く、なんだかこう可愛らしいのだ。
そんなことだから、背景に効果音を背負うという漫画的表現法が現実に起こったかのような錯覚を覚えるのも無理はないかも知れなかった。
つまり何が言いたいかと言うと『メイド可愛い』
「何を妄想にふけってるです?」
事実、妄想の世界に入り込んでいたレヴィンは、ふと我に返ると目の前の少女メイドへと意識を向ける。
「君は何者なんだ?」
「どこにでもいる、ただのメイドなのです」
「いやいやいや、普通のメイドが心霊現象なんか起こさないからッ!」
「心霊現象じゃないのです。この家の調度品は私がしっかり管理してるのです」
「となると、さっき調度品を揺らしたり、物を投げつけたのは君って事になるな」
「ちょっと脅かしただけなのです」
「やっぱし君が起こしたんじゃないか!?」
「それは見解の相違なのです」
その少女は、レヴィンのツッコミをものともせず、淡々と無表情で答えている。
彼女はボブカットの淡い青色の髪をさらりと揺らすとレヴィンに話しかけた。
「ここは私が住んでいる家なのです。邪魔者は消えるといいです」
「俺は、この家を拠点にしようかなと思ってるんだけど」
「寝言は寝て言いやがれです」
「でも、こうして見ると、家の中も大分荒れてきてるんじゃないかな?」
レヴィンは、一つの推測を立てていた。
この家は彼女の支配下にあり、今この家は荒れてきている。
「うッ……返す言葉がないのです」
「魔力がいるんじゃない? 俺で良かったら何とかなると思うけど?」
「み、魅力的な提案なのです。やりますわね、こんちくしょう」
口は悪いが可愛いからいいかとレヴィンは考えて彼女の味方に勧誘する。
「ふふふのふ。でもこの私と簡単に契約できると思ったら大間違いなのです……ってレレレのレ!?」
ちょっとばかり古臭いリアクションを取りながら少女は言う。
「契約できそうなのです。あなたは何者なんです?」
「ただの無職だよ」
レヴィンがそう言うと、目の前の少女はキリッと姿勢を正すと、両手を前に突き出して魔法陣を展開する。
「我、彼の者を主と崇め奉らん……契約せよ」
その言葉と共に虚空に描かれた魔法陣は、レヴィンの胸の辺りに吸い込まれ消えた。
するとレヴィンに少しばかりの虚脱感と共に、少女とのつながりを示す一本の糸のような感覚が芽生える。
「マスター。私の名前は、ミリアです。ご覧あれ!」
そう言って、右手をかざすと、薄汚れていた壁が白さを取り戻し、天井に張っていた蜘蛛の巣は取り払われた。
更に左手をかざすと、床は掃き清められたように輝きを取り戻し、調度品が新品であるかのように存在感を増した。
目の前で起こった不思議な現象にレヴィンが驚いていると、ミリアが平然とした顔で言ってのける。
「マスター。この家の管理は任せるです」
「ああ、頼むよ」
そうやって完全に二人の世界に入り込んでいると、横手から控えめに声がかかった。
「あのー。では、ご契約という事でよろしいでしょうか?」
声の主は、不動産屋の担当者であった。
「あッはい。よろしくお願いします」
「では、これでお願いします」
そう言って担当の女性は算盤を弾いてレヴィンに見せる。
「!? さっきより値段が上がっている気がするんですが……」
「だって、心霊物件の原因は解消されましたよね?」
「えええええええ!? 解消したのは僕ですよ!?」
「それはそれ、これはこれです」
その後、値段交渉は白熱した展開を見せ、結局、担当者の多少の妥協によって交渉はまとまったのであった。
そんなこんなで不動産屋に向かい、契約を完了させたレヴィンは再びこの家に戻ってきた。
ついでに自宅に寄ってルビーとオレリアを連れてくるレヴィン。
「さて、ミリア。今日から、ここにこの娘達が住むからよろしくな」
レヴィンはそう言って終始空気だったフレンダと他の二人の方を指し示す。
「あなた達……マスターのなんなのです?」
気のせいか、ミリアから何やらただならぬ気迫を感じるレヴィンである。
「わ、わたくしはフレンダと申しますわ。わたくしはレヴィン様の……レヴィン様の……」
両手の人差し指でもじもじしているフレンダを置いといてレヴィンは話を進める。
「皆、俺の仲間だから仲良くしてくれな?」
「イエス。マスター」
そう言って、ミリアはレヴィンに敬礼のポーズをするのであった。
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