神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
波 七海
波 七海

1-21 パーティ結成

公開日時: 2020年10月7日(水) 19:00
文字数:4,559

「ただいま!」


 レヴィンは家の扉をズババババンと開けた。

 およそ八日ぶりの我が家である。ちょうどリリナが家の掃除をしているところだった。


「おおっと。びっくりした! お帰り。無事でよかったよ。後、戸は静かに開けなさい!」


「うん。ごめん。依頼は結構余裕だったよ。じゃ、ちょっと出かけてくるッ!」


 レヴィンはシュタッ!と手を上げると家から飛び出した。

 後ろでは「忙しない子だね」とリリナがぼやいていたようだが気にしない。


 行先はすぐ隣の家である。

 つまり目的はアリシアだ。

 扉をノックすると、中からベネッタが出てくる。


「あら久しぶりね。アリシアかしら?」


「ただいまです。お願いします」


 ベネッタが奥に引っ込むとすぐにアリシアが現れた。

 彼女はレヴィンにまとわりついてくる。


「レヴィン~遅いよ~」


「ごめんごめん。やっぱカルマは遠いね。んでどうなった?」


 レヴィンは余計な事を省略して彼女に尋ねる。

 すると彼女はビシッと敬礼して答えた。


「隊長ッ! 無事説得に成功しましたッ! シーンも大丈夫でありますッ!」


「でかしたッ! じゃあすぐ出かけるぞ!」


 そう言うと、アリシアにカルマで購入した装備一式を手渡す。


「ふえッ!? な、何これ?」


「何ってアリシア用の装備だよ。カルマの街で買ってきたんだ」


「ええッ!? なんだか高そうだよッ!?」


「いいんだよ。俺が皆を巻き込むんだから問題ないよ。何も言わずに受け取って欲しい」


 アリシアはとても嬉しそうだ。目がウルウルして涙がこぼれそうだ。

 彼女はお礼を言うと、いったん家の中に引っ込んで着替えを終わらせてから戻ってくる。


「へへ~どうかな?」


「ああ。良く似合ってる。新米冒険者って感じがよく出てるよ」


「し、新米?」


「まぁ駆け出しの冒険者って事だよ」


 レヴィンは更に「次はシーンの家に行くぞ」と言って彼女を促した。

 彼女は行くぞと言っておいて動かないレヴィンを不思議に思ったのか彼に問いただす。


「ん? 早く行かないの?」


「俺はシーンの家なんて知らないって」


 アリシアは「あそっか」と間抜けた声を出して歩き出した。

 その後をレヴィンが着いて行く。


 やがてシーンの家に到着した。

 アリシアが家の扉をノックする。

 すると、シーンの母親らしき女性が家から顔を出す。


「こんにちは! シーンはいますか?」


 アリシアが挨拶してシーンを呼び出す。

 その女性は彼女の忙しない様子から急ぎである事を察したのか、すぐにシーンを連れて来てくれた。


「シーン! 突然ごめんね? 何かしてた?」


「ん……本読んでた……」


 シーンは少し眠たそうに目をこすっている。

 レヴィンは自分を紹介してくれとばかりにアリシアの腕をひじでつついている。


「シーン。紹介するね? 彼は幼馴染のレヴィンだよッ! 一緒に冒険者やる仲間だよッ!」


「ん……了解」


 レヴィンはシーンとは初対面である。

 彼は少し緊張しているようだ。表情も固い。


「あの……レヴィンと言います。これから冒険者仲間としてよろしくお願いします……」


「よろしく……敬語はいい……」


「そうだよ~。そんなのレヴィンらしくないよ~」


「そっか。解ったよ。ところでシーンにはこれを受け取って欲しい」


 レヴィンは気を取り直してそう言うと、アリシアの時と同じく、カルマで購入した装備を渡す。

 シーンの目が驚きで見開かれる。


「これは……いいものだ……」


 早速、着てみるように促すとシーンは少し照れくさそうにして奥に引っ込むと着替えて出てくる。


「おお。良い感じだね」


「シーン! 似合ってるよッ!」


「ありがと……。お金は少し待って欲しい……」


 お金の心配をするシーンにレヴィンは手の平を前に突き出してこう言った。


「お金は別にいいよ。それより一緒に仲良く頑張ろう!」


 その後、しばらくお金について問答が続いたが結局シーンが折れた格好となった。

 これで仲間は三人になった!


「さぁ、お次はダライアスだ」


 レヴィンはそう言うと、勢い込んでダライアスのお宅訪問に向ったのだが、あいにく家は留守であった。

 彼の一家は農家である。畑に居る可能性が高い。

 別に今日来ると伝えていた訳ではなかったので仕方がない。

 レヴィンは先に自宅によってグレンにシーンを紹介してから城壁外のノーブルの畑に向う事にした。

 ちなみにノーブルとはダライアスの父親の名前である。




 自宅に帰ると、グレンとリリナがお茶を飲んで一服していた。

 早速二人にシーンを紹介した。

 グレンは約束通り冒険を許してくれたが、レヴィン以外がまだ依頼も狩りもした事がないのを知ると、しばらくは精霊の森で我慢しろと言ってきた。もとより最初から初心者レベルで魔の森に行けるとは考えていないレヴィンは二つ返事で了承した。

 そして三人は慌ただしくレヴィンの家を後にして、城壁外に向う事にした。

 ノーブルの畑の場所は知っている。西の城門からそれほど離れてはいない。

 レヴィンはまだ少し距離がある段階でダライアスの姿を確認できた。彼は雑草の処理をしているようだ。


「おーい! ダライアス!」


「おう。レヴィンじゃないか。どうしたんだ?」


「前に話してた冒険者になる件だよ。早速、依頼を受けてみようと思って仲間を連れてきたんだ」


 その言葉にダライアスの表情が曇る。


「ん? なんだどうした?」


「いや、実は言ってなかったが、親父に反対されてな……」


 農家である一家の長であるノーブルとしては貴重な働き手を失うのが嫌なのだろう。

 もちろん、危険な仕事をさせたくないというのもあるかも知れない。

 ダライアスの言葉を聞いてレヴィンは近くにいたノーブルの下へと足を向けた。


「ノーブルさん、こんにちは」


「おう、坊主か。何か用か?」


「ダライアスが冒険者になるのを認めて欲しいんです」


「駄目だ。農家にとって人手不足は深刻だ」


 ノーブルは真剣な顔をレヴィンに向ける。


「冒険者になれば、良いお金になります。作業効率を上げる農機具だって買えるようになるでしょう」


「お前達は駆け出し冒険者だろ? 正直言って、そんなに稼げるとは思えないな」


「そこは僕を信じてくださいとしか言えません。生意気な事を言って申し訳ないのですが、妹のデリアちゃんだって学校に通わせるんでしょう? だったら先立つものが必要になるはずです!」


「金は大人である俺がなんとかする。子供が口を挟む事じゃねぇ」


 そう言うとノーブルはぷいッと顔を背けて作業に戻ろうとする。


「何とか成果を出しますから! それに獣を狩って肉を持って帰る事も出来ます。とりあえず春休み中の手の空いた時に彼を連れて行く許可を頂けませんか? それに四月からは休みの日だけの冒険になります。そこまで人手不足にはならないと約束します」


「親父! 俺からもお願いだッ! デリアの学費だって稼いでみせるッ!」


「……」


「親父ッ!」


 ノーブルは耳を貸さない。態度は頑なだ。

 すると、ダライアスは「もういい……」とつぶやくと、レヴィンに言った。


「冒険者ギルドに行こう。パーティ登録もしなくちゃならないんだろ?」


 手に持っていた雑草を放り投げて城門の方へ早足で歩きだした。

 レヴィン達三人はノーブルに頭を下げてダライアスの後を追った。




 四人は冒険者ギルドへとやってきていた。

 まずは冒険者登録だ。


「すまないが貸しておいてくれ」


 ダライアスはそう言うと、持ち歩いていた戸籍カードとレヴィンから受け取った銀貨三枚を受付嬢に提出した。

 ダライアスが受付嬢の説明を聞いている間、パーティの名前をどうしようかと考える。

 同じ事を考えていたのかアリシアもレヴィンに聞いてくる。


「ね。パーティの名前はどうするの~?」


無職ニートの団とかどうだ?」


「ニートって何?」


「伝説の職業クラスだ」


 レヴィンはアリシアの目をまっすぐ見つめ、断言した。


「伝説……カッコイイ……」


 シーンの目がキラリと光る。


「他に何か案があったら言って欲しい」


「リーダーはレヴィンなんだからそれでいいよ~」


「問題ない……」


 パーティ名はあっさりと決まった。

 ここでダライアスへの説明が終わったようなので、パーティ結成の申請をする事にした。


「パーティの結成ですね。名前はどうなさいますか?」


無職ニートの団でお願いします」


「では皆さんのタグをお預かりします」


 受付嬢は四人の冒険者タグを受け取ると、奥に居たギルド職員に手渡した。

 そしてパーティ結成についての説明を始める。


「パーティを組むと色々なメリットがございます。パーティを組んでいればソロならば受注できない依頼を受ける事ができます。また、指名依頼も多くなる傾向がございます。他にもクラン神ウルスによりパーティに加護や祝福が与えられる場合がございます。更にランクがあがれば名誉や名声が手に入り、貴族や王族など様々なコネクションの構築にも役に立つでしょう」


「クラン神なんて存在するんですか?」


「ええウルスと言う神様です。神託による情報のみなので曖昧なのですが、パーティ全員に効果のある加護や祝福が得られるようです。メンバーが成長しやすくなったり、魔力などの力が増幅されたりと効果は様々です」


(ヘルプ君検索。ウルス、加護)


 レヴィンの頭の中に情報が羅列されていく。


(ふむ。確かに。メンバーの経験値アップや各パラメータのアップなんかが見込めるのか……。何の加護が得られるかはランダム……。ランクが上がれば加護も増える可能性あり、と。ギルドができた時に神様によって規則ルールが整備された感じか)


「デメリットはメンバー一人の違反や失点でもパーティ全員に責任が及ぶ事がございます。また、クラン戦を仕掛けられる場合がございます」


「クラン戦?」


「はい。決闘を申し込まれる可能性がございます。自分達のパーティランク以下の他パーティからの決闘は基本断れません。これは神様の決めた規則ルールです」


「決闘して何かメリットはあるんですか?」


「決闘で勝てば、相手の加護を強奪する事ができるようです。それに名声も手に入りますね。良い悪いに係らずですが……」


「ふむ。今まで公式のクラン戦の記録とかはありますか?」


「はい。私闘の場合は解りませんが、ギルド立会いの下で行われたものについては資料室などに保管されているはずです」


 ここで先程のギルド職員が全員分の冒険者タグを持って戻ってきた。

 そして全員に返却される。

 レヴィンはタグをまじまじと眺めた。他の三人も同じ様子だ。

 パーティ名の箇所が無所属から無職ニートの団に変更されている。パーティランクはEだ。


「ちなみに加護って何か解りますか?」


「加護は冒険者タグに記録されていますので、ギルドで参照可能です。無職の団の加護は、体力向上Lv2ですね。」


 これで手続きは全て終了した。後は依頼を受けるだけだ。

 レヴィン達は受付嬢にお礼を言って掲示板を見に向った。


「あ、そうだ。遅くなったけど、ダライアス用の装備を渡しとくな。受け取って欲しい」


「なッ!? こんなもの受け取れない!」


「もう買ってしまったんだ。諦めてくれ。異論は認めない」


 ダライアスはレヴィンが言い出したら聞かないのを理解していたため、すんなりと言う事を聞いてくれた。


「何から何まですまないな……」


「気にするなって」


 レヴィンはもう掲示板に目をやっている。

 アリシアはシーンとあれこれ話ながら依頼書を指差している。

 しばらく検討した結果、レヴィンは最初に受ける依頼を決めたようだ。


「よし。これなんてどうだ?」


 レヴィンは依頼書を取り外すと、皆に見せた。

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