目が覚めたのは、十時頃だった。
この宿『魔のホテル』は各部屋に時計が備え付けられているのだ。
それだけでどれだけ儲かっているか解るというものである。
しかし、盗まれる心配はないのかと余計な事に気を回すレヴィンであった。
朝食はビュッフェスタイルである。
とりあえず、白パンと目玉焼きにソーセージ、肉野菜スープを持って席に座る。
既にアリシアとシーンがいたので、その横に座る事にした。
ついでに朝刊も持ってくる。
「おはよ~」
「おはよ……」
二人の挨拶に手を挙げて応えるレヴィン。
「早いな。昨日はゆっくりできたん?」
「寝心地が良くって一晩ぐっすりだったよ~」
「エンジョイ……」
何がエンジョイか、と思いながらも突っ込む事は止めておいた。
座ってすぐ朝刊を開くと、アリシアが笑って言った。
「もう。レヴィンったらお父さんみたいだよ~」
「む。そうか? じゃあ食べ終わってからにしよう」
朝刊を読むのを中断するレヴィン。
朝食に舌つづみを打つ。
やはり休みの日にまったりした朝を過ごすのは良いものだ。
二人はもう食べ終えたらしく、食器を片づけて戻ってくる。
「夏休みももう半分が終わるのか……」
しみじみと長い戦いの日々だったなと振り返る。
いや、戦いよりも移動に時間がかかるのだと思い直す。
転移の魔法を覚えたいのだが、諸国を放浪している、イザークに聞いても使い手を知らないと言われたのだ。
しかし、転移の魔法の存在が解っているという事はどこかに必ず魔導書が存在するはずである。
レヴィンは今から胸をときめかせるのであった。
それともう一つ気になるのは、通信手段である。
有線の電話がないのは解っているが、無線のようなものはないのか気になっていた。
魔石とか魔導具とか、不思議道具で遠距離通信。
これがあれば大変便利である。
(胸が熱くなるな)
そんな事を考えていると、食事が終わった。
食器を所定の場所まで下げると、席に戻って朝刊を広げる。
『小麦高騰』の文字がでかでかと掲載されている。
やっぱり王国にも影響はあるようだ。
エクス公国は蝗害で大凶作だし、インペリア王国は戦争で小麦買い占めてたみたいだし……
アウステリア王国はどうするんだろうと考えていると、残りの三人が食堂に現れた。
「ベネディクトまで、こんなに遅いとはな」
「いやぁ、久しぶりに良いベッドで寝たからね。寝過ごしちゃったよ」
「うぇーっす……」
ヴァイスが超適当な挨拶をしてくる。
ダライアスも目をこすりながら近づいてくる。
まだ眠たそうだ。
「まぁゆっくり食べるといいよ。時間はある」
三人はレヴィンに言われた通り、まったりブランチをとったのだった。
皆がブランチを終えた後、早速装備を見に行こうと言う話になった。
しかし、一つ聞いておく事があったので、レヴィンは部屋に戻って南斗旅団のアジトで分捕った剣を二振り持って戻る。
「この剣なんだけど、どうかな?」
ダライアスとヴァイス、ベネディクトが手に取って試している。
「こっちの剣はなんか禍々しい感じがするね」
ベネディクトが正直な感想を述べている。
「こっちはなんかいいな……すぐなじんでくる」
装飾は地味だが、気に入った素振りを見せるダライアス。
ヴァイスは、どちらも気に入らなかったようだ。
「まぁ、気に入ったら言ってくれ」
レヴィンはそう言うと、二振りの剣を持っていたリュックに挿し入れた。
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