それからしばらく神殿の事を根掘り葉掘り聞いて回り、頃合を見て人気のない路地をゆく。
先程のゴロツキを退けてから十分な時間が経っている。
今はもう夕方近くになっている。神殿がレヴィンが思っている通りの組織なら、刺客が送られてもいい頃だろう。
そんな事を考えていると、レヴィンの進行方向から三人。後方から三人の計六人が近づいて来る。
どう見ても一般人には見えなかった。
「よぉ、兄ちゃん。神殿の事を嗅ぎまわってるんだってな」
「それが何か?」
「ちょっと目障りなんだよ。ナミディア男爵」
ばれているのか、と感心するレヴィン。
マイセンが何かチクったのかも知れない。
おそらく彼はレヴィンに帰られてはマズいと思ったのだろう。
「目障りだったらどうだと言うんだ?」
「消えてもらおうか」
そう言った瞬間、腰の剣を抜き放ち、間合いを詰めてくる男三人。
「凍結球弾」
後方にいた、一人が氷の魔法を放ってくる。
レヴィンは剣を抜き放ち、氷の白い球をかわすと、先頭の金髪の男と剣を交わす。
レヴィンの持っている闇の剣は新しい刀身を装着済みである。
今は闇の刃は出していない。
「火炎球」
レヴィンは、固まっていた三人に向かって火炎球を放つ。
その三人は、火炎球と判断するや否や散開し、炎は地面のみを舐めつくす。
しかし、大きな炸裂音が辺りに木霊した。
大きな音に焦ったのか、舌打ちをしつつ、金髪の男が中段の突きを放ってくる。
レヴィンはそれを払いで弾き返しつつ、下段からすくいあげるように斬りつける。
その一撃を受け止めて、レヴィンの剣を足で抑え、上段から思いっきり振り下ろしにかかる。
しかし、剣がなくとも魔法があるレヴィンは、すかさず魔法陣を展開した。
「雷電」
至近距離で雷の直撃を受けた金髪男は、電撃に体を貫かれ地面に倒れ伏す。
すると、レヴィンは大きく後ろへ横へ飛んで、挟み撃ちを回避しつつ魔法を放った。
「爆撃風」
広範囲に渡って風が吹き荒れ、圧縮された空気が爆発的に荒れ狂う。
それに巻き込まれて吹っ飛ぶ三人。
回避して回り込んでくる残り二人には、別の魔法をプレゼントする。
「亜極雷陣」
バチバチバチバチッ
広範囲に電撃を撒き散らす魔法によって戦闘不能に陥る二人。
さっき吹っ飛ばした面々も動けないで地面に転がってもがいている。
レヴィンは全員をひきずって一か所に集めると、最初に一番偉そうだった男に問いかける。
三人ほどは気絶しているようだ。
電撃によって、しびれて動けない彼らだが、一応魔法による反撃を警戒するレヴィン。
「で? 神殿が何故、俺を狙う?」
「はッ! 言う訳ねぇだろ」
それを聞いたレヴィンは取り出したダガーでその茶髪男の指を斬りおとす。
悲鳴を上げる茶髪男。
「言葉に気をつけろよ。言う訳ないって事は知っているって事だよな?」
「……」
一転、沈黙する彼に、レヴィンは無慈悲な一撃を加える。
再び、周囲に悲鳴が響いた。
「わあった! わかったからッ! 俺は神殿から頼まれただけなんだッ! 神殿の事を嗅ぎまわってるヤツがいるからって」
「俺が貴族だと知っていたな? 神殿の背後に誰がいる?」
「知らねぇ……目障りな貴族がいるって神殿の連中から聞いただけだッ!」
「神殿の誰だ?」
「名前は知らん……解るのは神官だって事だけだ」
「は? お前はそれだけで依頼を受けるのか?」
「結構な額を前金で渡されたんだ。本当に背後に誰がいるかなんて知らねぇんだッ!」
「解った。後は、監獄の中で洗いざらい話すんだな」
レヴィンは、そう言うと高速飛翔で表通りに出て、警備隊への通報を頼むと、再び、襲撃者の下へと戻る。
しばらくして到着した警備隊に六人を引き渡すと、ドルトムットの邸宅への帰路についた。
ちなみに尋問時に痛めつけた男には回復魔法をかけておいた。
流石にああいった方法を取るのはレヴィンの性に合わないので、気分的に落ち込んでしまう。
帰り道で思わずため息をつくレヴィンであった。
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